1月23日、東京・下北沢駅前劇場にて、浅草キッドの水道橋博士、博多華丸大吉の大吉、メディアジャーナリスト・津田大介によるトークライブ「Munasawa King Live♯8『博士・大吉・大介のお笑いメディア道場』」が開催された。新世紀型テレビの楽しみ方を特集するとの触れ込みに、早速記者も会場へ足を運んだ。
ライブのメインテーマは、水道橋博士が「テレビ維新」と叫ぶ、次世代HDR「SPIDER」のデモンストレーション。ゲストにはSPIDERの開発を手がけた株式会社PTP(http://www.ptp.co.jp/spiderzero/index.html)の代表取締役社長である有吉昌康氏を招き、その魅力を存分に語った。
会場には、昨年12月に発表され、今年4月下旬に企業向けに発売予定という「地デジ版 SPIDER PRO」がセッティングされた。スクリーンに映し出されたSPIDERの画面は、まるでデザイン事務所のホームページのように洗練され、それがHDRのトップ画面だとは思えない。
とは言ったもののSPIDERというもの自体を知らない人も多いだろうから、その機能や目的について簡単に説明する。
SPIDERとは、ひとことで言うと、インターネットのように「テレビが検索できるハードディスクレコーダー」だ。しかもSPIDERは全チャンネルを同時に録画する。保存容量はさすがに無制限ではないが、地上波デジタル放送なら1週間分のテレビ番組が全て録画できる。当然、個人の設定によってはNHKだけに特化した録画も可能だし、時間帯指定などもできる。そうすればその分だけ録画日数が増えるということだ。そうして録画された番組を自由自在に検索しヒットした番組を楽しむ、それがSPIDERだ。
開発者である有吉氏はそんなSPIDERの魅力を「新しい発見」にあると強調した。たとえば「プロレス」というワードで検索すると、その録画された番組全てから「プロレス」に関するシーンが検出される。しかもそれは決して「プロレス番組」だけではない。
ライブでのデモンストレーションでは、「プロレス」での検索後、ある番組内での1企画である「女子プロレスラーを目指すインディーズ歌手」というシーンが検出される。ただ単に「プロレス」を見ようと思ったユーザーも、SPIDERの検索結果から思いがけず「女子プロレスラーを目指すインディーズ歌手」のファンになってしまうかもしれないというわけだ。
また、「アントニオ猪木」という検索結果では、もちろんアントニオ猪木が出演した番組も選ばれるが、「アントニオ猪木を物まねする芸人」のシーンも網羅される。こうした結果は、より猪木への愛情を深くさせることもあるだろう。
だが一体なぜこのようなことが可能なのだろうか。局側が番組内容としてそこまで細かく登録しているとは思えない。答えは案外とシンプルだった。ここまで細かなSPIDERの検索システムを可能としたのは、SPIDER側が365日24時間体制でテレビを見続け、そこから検索ワードを生み出していたのだ。
次世代HDRと銘打っているものの、このSPIDERのシステムを可能としているのは、デジタル時代に似合わないアナログ的努力だったわけだ。
ライブでは現在法人向けに発売されているSPIDERの値段も公表されたが、その金額は本時価格80万円で月々のサービス料6万と到底一般視聴者には手の出せるものではない。だが今年の年末に予定している一般ユーザー向けSPIDERは、現在のHDRと対抗できる金額を設定しているという。具体的な数字こそ出なかったがその発言から考えれば10万円を切るとみていいだろう。サービス料金については残念ながら言及しなかったが、全世帯向けサービスを目指しているというからには、電話の基本料金程度だろうか。ともあれ、低価格は世の中に浸透する最大のキーポイントだ。SPIDER側にはびっくりするほどの値段を期待したい。
最後にメンズサイゾー的SPIDER活用術を予言的に試みてみよう。
前述したようにSPIDERの魅力はなんとっても簡単にサクッとできる「テレビの検索」だ。お気に入りのアイドルを検索すれば、そのアイドルに関する全てのテレビ番組が検出される。当然そこにはCMなども含まれるため、今まではかなり面倒くさかった、お気に入りアイドルのCM集なども簡単に見ることができるし、DVDに焼くことも可能だ。
また、SPIDERの魅力のひとつに視聴者たちのコメントによるソーシャルネットワークの構築がある。そこでは「胸チラ」「パンチラ」「入浴シーン」などの情報交換が盛んに行われるだろう。今でこそユーチューブなどでそういった名場面集の公開は当たり前となっているが、それも被写体からの要請があれば削除されてしまう。だが自分のハードディスクであれば、そんな心配はない。もちろんそういったシーンはSPIDERの検索ワードでは引っかからないだろうが、ソーシャルネットワークを駆使さえすれば、そうしたマイベストシーンも簡単にできるというわけだ。
ほとんどの人が現在放送されているテレビの1%程度しか視聴していないと有吉氏は語り、また、世の中のデジタル化がここまで進み、生活が飛躍的に便利になっているにも関わらずテレビの本質は未だに前時代的だと指摘する。気づきもしなかったテレビ番組に気づくことができ、しかもその情報を他人と共有できるというSPIDER。まさにこのシステムは新時代のテレビ革命といって差し支えない。地上波デジタル放送への完全移行まで残すところあと半年あまり。年末に発売予定というSPIDERとともに、今年はテレビ新時代の元年だ。
(文=峯尾/http://mineoneo.exblog.jp/)
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