あれはもう何年前になるのだろう。今はなき月刊のAV専門誌『さくらんぼ通信』(ミリオン出版)において、『月刊小沢奈美』という連載のライターを担当していた。毎月小沢奈美のホットな最新情報を載っけようという見開き2ページか3ページのコーナーだった。カラーページだった。何でこの連載が始まったのか。僕と編集長のO氏が小沢奈美の大ファンだったから。簡単ですな。「じゃあ、奈美ちゃんのニックネームを僕たちで付けてあげようじゃないか」と、編集長と僕はJR中野駅前の居酒屋で打ち合わせと称して飲んでいて、僕が、「ポンポコピー」と、いとも簡単に口走ったと記憶している。タヌキ顔だからね、奈美ちゃんは。「いいね。それで行こう」となりました。勝手に人気アイドルにニックネームを付けてしまったことで、『さくらんぼ通信』の競合誌、やはり今はなき『アップル通信』(三和出版)の小沢奈美AVレビュー原稿に、誰が書いたか呆れたように怒ったように「何がポンポコピーじゃ」とあった。
今回、ここで、このアリスJAPAN復刻DVDのレビュー仕事をいただいた。先週の藤木TDC、僕、東良美季のローテーションで回っていくこととなりました。基本、編集長が「適材適所」で作品を割り当ててくれます。もう二度と触れることはないであろうと思っていた。まさか、とっくの昔に引退した小沢奈美を語る機会が訪れようとは夢にも思っていなかった! マジで!
あれは何年前のことだ? あのエロ本バブル絶頂期を象徴していたコーナー(だって、取材で撮影現場に行って、撮影が終わった後、奈美ちゃんと我々スタッフはご飯やらカラオケに取材経費枠で繰り出していたんだもの)月刊小沢奈美をやっていたのは。
ウィキペディアに「小沢奈美」、まさかと思ったらあったではないか。何度となく見たデビュー作『好きよ!! キャプテン』(VIP=今はない老舗AVメーカーです)は1989年発売とある。えェ~!? もう21年前!? せいぜい10年くらい前だと思っていたよ。
この記憶違いは、自分がいかに変化のない日常を過ごしているのか、その表れだ。「歴代のAV女優ナンバーワンて誰ですか?」しばしば聞かれる。僕は、AV女優はいつだって現在(いま)だ、と思っているので、「伊東遥ですね」と(彼女が引退した)この9月まではそう答えていた。小沢奈美も、あの2年間、わが「歴代ナンバーワンAV女優」だった。
この『フラッシュバック』シリーズは、のちに映画監督にもなった望月六郎が「発明」した、光によるボカシ(残念ながらモザイクも少し乗っかっている)で男女の性器を輪郭くっきりに見せようというもの。撮影現場に光量たっぷりの円筒状のライトを備え、局部を照射していた。フラッシュバックとはすなわちこの野心的手法の呼称だ。
過去にこの小沢奈美版(1990年発売)を見たのかな? これは見ていなかったのかな? 記憶は不鮮明、とにかく、まさか小沢奈美をDVDで見られる日が来るとは、そう、レビュー仕事で見る小沢奈美AVはVHSテープのみだったのだ。初小沢奈美DVDを愛機Macで再生だ。「か、可愛い!!」この言葉しか出ないね。「ここまで可愛かったのか!?」と。
当時、小沢奈美のマネージャーははっきりこう言っていたね。
「小沢だけはメーカーに営業回りすることなく、向こうから出演オファーがどんどん来てすぐに1年分のスケジュールが満杯になりました」
小沢奈美は活動2年で30本以上の作品を残した。
『フラッシュバック21』における小沢奈美は、ある病院に入院している謎の少女。冴えない医大生の若者が彼女に一目惚れして、次々とエロチックな妄想をする。
<そのまんまの清純派少女奈美とセックス>
<ナースに扮した痴女奈美に責められる>
<セーラー服を着せた奈美をレイプする>
今のAVとは違い、ハメシロ(本番挿入してまっせという画)は見せない。セックスシーンの描写は驚くほど淡白だ。もちろん昨今の過激が当たり前の「アイドルAV」を見すぎているからそう思うわけで。そして、小沢奈美には間違いなく「歴代ナンバーワン女優」の輝きがあったね。
清純派の少女と小悪魔な痴女。
この両方が両方とも小沢奈美なのだよ。両方を味わえるんだもんな。サンキュ、オイシイぜ望月六郎! と20年前の望月監督に声をかけたい。
ウィキペディア小沢奈美には「愛称:ポンポコピー」 とあった。今日知った。とてもとても面はゆい……。
(文=沢木毅彦)
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