「亭主関白」も今は昔。現代日本では何かと男性の立場が弱くなっている。
女性専用車両やレディースデイなど、世の中には女性を優遇するサービスが溢れているし、「男は女をちやほやするのが義務」とばかりにワガママ放題の女性も増えているようで、男性の地位は下降する一方だ。「男性は女性と比較して、肉体的にも社会的にもか弱いのだから、守られて当然」という意見もあるだろう。しかし2009年の総務省調査によると、30歳未満の平均月収の比較では、女性の収入が初めて男性の収入を追い抜いている。男女のパワーバランスが平等に近づいているのは良いことだが、男性の中には「女性ばかり優遇するのは不公平だ」という意識もあるようだ。以前紹介した「女性専用車両に反対する会」をはじめ、徐々にその声は大きくなっている。
先月28日付けの京都新聞で、男女の意識が大きく変わっていることを表す報道があった。京都府大山崎町で11月初旬に行われる予定の「婚活茶会」が、10月末の時点で女性の応募者が30人を超えているのに対して、男性の応募者がなんとゼロだったというのだ。「茶会」という拡張の高さをハードルに感じてしまったのかもしれないが、参加者がいないというのは極端すぎる。これまで、こういった婚活イベントは男性側が多いのが一般的だった。主催者側は女性の参加費を無料にするなどして、女性参加者を募っていたのだが、最近はそうした運営方法に対する批難も多い。人気アニメ「らき☆すた」で町おこしをしている埼玉県久喜市鷲宮の商工会が企画し、11月末に開催される予定の「オタ婚活」にも暗雲が立ちこめている。男性が8000円、女性が無料という参加費設定に、ネット上のオタクたちが猛反発を起こしたのだ。確かに「萌え系オタク」と結婚したい女性は希少かもしれない。何が何でも女性参加者を確保したい意図は分かるが、男性からの反感を買っていては元も子もない。
先月21日の東京新聞夕刊コラム「放射線」に中央大学の山田昌弘教授が寄せた文章は、男性に対する差別を批判する内容だった。レストランの女性料金や限定メニューは、男性への差別だというのだ。教授は自身の経験から、男性が女性限定メニューをレストランで注文した場合に、出してもらえる確率は約半分だという。「女性を呼び込みたいからとか、女性の方が収入は低いなどいろいろ理由はつけられているが、結局は、偏見に基づく一種の差別である。男性優遇システムは批判されるが、女性が優遇されるシステムは批判されることなく残り続ける」という教授の指摘は、女性を優遇しがちな風潮を端的に表している。
「テレビをはじめとするメディアの主なターゲットは女性です。社会全体が女性を持ち上げる傾向にあるのは仕方がないのでは?」
こう語るのは、テレビ情報誌の編集に携わっている男性のA氏である。A氏は女性優位の考え方が浸透している現状をこう捉えている。
「女性はマスメディアにとって大事なお客様ですからね。女性に喜んで貰うのが一番重要。そしてお金を使って貰えばなおありがたい。さんざんおだてて、ファッション、ビューティー、ライフスタイル、あらゆる商品を買わせるのが究極の目的なんですよね。最近は『美魔女』なんて言って40代の女性を釣ろうとしているトコロがあるようですが、成功したらもの凄い経済効果になるでしょうね……」
女性に自信を与える、と言えば聞こえはいいが、結局はビジネスに使われているというのが現実だ。そして、おだてられて勘違いしてしまう女性がいるのも事実。そんな流れが、女性を極端に高めて、男性をとことん貶めるような風潮を生み出しているのかもしれない。しかし、男性にかけられ続けた圧力が、いつ爆発するか分からない。
ついには女性への敵意から、悪質な暴力事件まで発生している。先月27日、川崎市川崎区の路上で、通行中の女性を無差別に殴るという事件が起こった。犯人の無職男性(34)は、過去に痴漢扱いをされた経験があり、それ以来女性を見ると腹が立つようになったなどと供述している。なお、いずれの女性も容疑者とは面識がなかった。痴漢扱いが冤罪だったとすれば、その憤りは相当なものだったろう。しかし、その怒りを無関係な女性にぶつけるのは、決して許されない暴挙だ。
この事件については、ネットの一部では「よくやった」「痴漢冤罪被害者の星」などというコメントが書き込まれている。ほとんどが冗談だとは思うが、それを本気にしてしまう人がいれば、次なる事件を生み出す原因となりかねない。「女だから○○だ」と断定することは、あまりにも愚かしい。自分たちがもっとも嫌う「男性はこうあるべし」という勝手な決めつけを、そっくりそのまま繰り返しているだけに過ぎないのだ。
世界経済フォーラムが発表した「男女格差報告」の2010年版によると、日本は134カ国中94位だという。これでも日本は前年より7つも順位を上げているのだが、依然としてかなりの低水準である。この順位がそれなりの位置に上昇するまでは、男尊女卑時代へのカウンター気味な女性優遇は続きそうだ。
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