バンダイナムコゲームス
12月23日と、クリスマス商戦に投入されることになったある意味注目のゲームソフト、『AKB1/48 アイドルと恋したら…』(PSP)。例にもれず、限定版や、3万円を超える「AKB48仕様PSP本体同梱版」まで、数種類のラインナップで発売される予定だ。AKB48ならではの方法で、音楽のヒットチャートに続いて、ゲーム売り上げランキングでも上位を目指している。
ゲームの内容はというと、AKB48のメンバーは全員が主人公であるプレイヤーのことを好きだという設定(現実には絶対あり得ない)で、48人全員がプレイヤーに告白してくる(現実には絶対あり得ない)中で、47人をフッて1人を選ぶ(現実には絶対あり得ない)という奇抜な内容だ。ただし、いわゆる「エロゲー」ではなく「恋愛ゲーム」なので、お付き合いが始まったところでアダルト要素はナシ。AKBメンは彼氏ができても、結婚するまでエッチなコトはしないんです(現実には絶対あり得ない)。
ところで、タレントを起用したゲームは、プレイヤーからの評価の低い、いわゆる「クソゲー」になりやすい傾向にある。これまでに発売された、評価の低いタレントゲームをいくつか見ていきたい。
あらゆるクソゲーの中で一番の語り草になっているのが、ビートたけしが制作に深く関わったと言われる『たけしの挑戦状』(86年/タイトー/ファミリーコンピュータ)。宝の地図をくれた老人を殴り殺す、ゲーム画面を1時間放置するなど、高難易度を通り越して理不尽な謎解きだらけの同作は、「伝説のクソゲー」として今なお多くのユーザーに語り継がれている。
AKB48同様に、旬の時期のアイドルを起用したゲームといえば、酒井法子の登場する『鏡の国のレジェンド』(89年/ビクター音楽産業/PCエンジン)。「異世界へと誘拐されたのりピーを救う」という内容は、当時こそ違和感はなかったものの、今ならブラックジョーク以外の何ものでもないだろう。
また、アイドルユニットを起用した『ラサール石井のチャイルズクエスト』(89年/ナムコ(現・バンダイナムコゲームス)/ファミリーコンピュータ)では、当時アイドルだった磯野貴理が、すさまじくブッサイクな似顔絵で登場。バカゲーとしてその筋には有名な存在に。
変わり種としては、『みつばち学園』(89年/ハドソン/PCエンジン)。本作ではアイドルオーディションとゲームのメディアミックスの試みがなされたが、どちらも中途半端なコケ具合であり、多くの人の記憶には残っていない。
極めつけは、『榎本加奈子のボケ診断ゲーム』(99年/オラシオン/プレイステーション)。5種類のミニゲームに挑戦し、ゲームオーバーになると榎本加奈子に痴呆症扱いされるだけという、弁護しようのないクソゲーだ。
80年代から90年代にかけては、「人気タレントを起用したゲーム」というだけである程度の売り上げを達成することができたが、それに甘んじた粗製濫造によって「タレントゲー=クソゲー」の図式が人々の中にインプットされていくにつれて、タレントの登場するゲームは減っていった。
『AKB1/48 アイドルと恋したら…』は悪名高い「タレントゲー」である以外にも、「クソゲー」ではないかと予想される要素はいくつかある。
1.どう考えても無理なテキスト量
恋愛ゲームでは、「攻略対象」が複数人いるのが当たり前となっている。いま一番話題になっている「ラブプラス」では3人だ。だが、本作の48人というのは前代未聞。
通常恋愛ゲームでは、キャラクターごとにシナリオを用意し、セリフなどもそれぞれの個性を考えて書かれている。だが、48通りものシナリオを用意するとしたら、通常の恋愛ゲームの軽く10倍の文字量となる。1人や2人のライターでこなせる量では決してない。
しかも本作は「フルボイス収録」を謳っており、そのことからも本作のシナリオは「前代未聞の短さ」であることが用意に想像される。
最悪の場合には、「セリフやシナリオが全員同じ」だったり、「告白されただけでエンディング」だったりといったことも考えられる。「1万枚の写真と80分以上のビデオを収録」を公称しているものの、そのことからも逆に、写真とビデオだけの作品である疑いが浮上してしまう。
2.中古市場は早くも戦慄!?
「複数買い」が当たり前になっている、AKB48関連商品。「通常版」(5,229円)、「期間限定生産版」(UMD2本で7,329円)、「初回限定生産版」(UMD2本にDVD同梱で10,479円)、「Premier Special Pack」(PSP同梱で36,729円)とナント4種類が発売されるヤリ過ぎ感で、本作もファンの財布を痛烈に傷めつける予定である。
人気の作品であっても、出荷数が多ければ値崩れを起こすのは中古ゲームの常。他のAKB関連商品の例にもれず、本作にも「撮りおろし生写真1枚」(通常版の場合)が付録されることになっており、写真目当てに買ったユーザーが、余ったゲームソフトを大量に売りに出すであろうことは必至だ。発売3カ月前の時点で、とてつもない数の中古がだぶつくことがすでに予想されるというのは、これまでになかった事態である。
もちろん賢明な中古ゲーム店では、安い買取価格を設定するか買取を拒否するだろうが、万が一、事情をよく知らない中古ゲーム店主が「話題の新作だから」といった理由だけで、高価買取を始めてしまったら……。ファン以外にも「AKB商法の犠牲者」が生まれかねない。
さて、この手のグッズのたどる悲しい運命のうちのひとつに、ファンの手によって破壊されるという結末がある。近年では、応援するアイドルに熱愛報道(もしくは、「非処女確定」のようなカミングアウト)があるたびに、コレクションを破壊して、その画像をネットに掲載するファンが出てくるのが常となっているのだ。
発売の翌日はクリスマス・イブ。ファンはこのゲームに温もりを憶えながらクリスマスを迎えるのだろうが、48人もいるAKBメンバーのうちの誰かが、クリスマスに「事件」を起こしてしまったとしたら……。高価な「PSP同梱パック」が、はやくも惨めな姿になる可能性も、否定できない。
(文:タコ野パウル)
『AKB1/48 アイドルと恋したら… 初回限定生産版 一度しか生産しません!オークション出品不可BOX』
売り逃げゴメン版!
『AKB1/48 アイドルと恋したら… Premier Special Pack』
『モンハン3』前にPSP買うつもり……という言い訳もあり?
もはや通常版は必要ないのでは?