不遇系極貧ライター突撃取材

将来に対する漠然とした不安を払拭! 『30代からのお金のトリセツ』著者インタビュー

okanenotorisetu.jpg『30代からのお金のトリセツ』 著:伊達直太

 突然ですが、皆さまは貯金していますか? 私はまったくもってしていません。派遣切りにリストラ、倒産、病気に災害、老後……。昔と違って将来の保証が皆無とも言える、先行き不透明なこの時代。いまお金がない人、運用に困っている人は何をすればいいのか? そんな不安を具体的に解消してくれる本が発売されました! それが、20代~30代に向けた『30代からのお金のトリセツ』。『「貯める」「稼ぐ」「備える」「借りる」「ふやす」「買う」お金の機能を使いこなせば将来の不安はなくなります』と言うこの本の著者・伊達直太さんに、まさに三十路に突入しようとしている私、27歳独身ライターがガチンコで悩みをぶつけるべく、インタビュー取材を慣行しました!

──まず最初に、この本を書こうと思われたきっかけは? 

「企画の相談している段階で、不況不安や人生設計の話になり、『30歳くらいからの将来に対する不安』というキーワードが出てきました。その時、その8、9割方はお金で解決できる問題だなと思ったんです。そこで、『易しいお金の本』にしましょうか、という提案をさせていただきました。お金がすべてではありませんが、子育てとかマイホームとか老後の生活とか、そういったことに関する不安は、お金で解決できるものがほとんどです。そこで、お金の面から豊かな人生を築いてくのに役立つ本を作ろうと思ったんです」

──私もフリーランスになって5年目なんですが、先日交通事故に遭って仕事ができなくなり、「備える」ことの大切さが身に染みました。本当に一寸先は闇ですよね。

「不況が長引く現代では、転職される方も多いですし、会社だっていつ潰れるかわからない。その意味で、以前にまして先が読みづらくなったと言えるでしょう。そんな社会を逞しく生き抜いていくためには、大前提として、自分なりに完結しているお金の扱い方をしていかなくてはいけないですよね。私はフリーランスになって今年でちょうど10年なのですが、最初の1、2年はお金の使い方がきわめて雑で、お金がないことがストレスになっていました。その延長線上にある自分の未来を想像したときに、非常に辛いだろうと思ったわけです。そこで、お金の作り方や使い方について考えて、将来的な不安を早いうちから軽減しようと考えたのです」

──確かに。私なんか日々の生活や支払いに追われてなかなか整理ができなくて……。やっぱりどこかで区切りをつけることは大切ですよね。

「そうですね。アドバイスさせていただくとすれば、まずは1年スパンで考えてみることをススメます。貯金も年単位で考えるのが大事です。でも、ある程度のお金を貯めて、定期預金に入れ、そのまま放置してしまう人って非常に多いですよね。それはもったいない! 置いておくだけで増えるほど、いまの時代、お金はカンタンではありません。また、いまはデフレなので現金が強いのですが、ずっとデフレのままということはありません。1年単位で貯金を管理できるようになったら、次は少し長期的な視野を持って、貯まったお金を投資してみるのもいいですね。稼ぐ、貯める、モノを買うという流れは、お金の扱い方の基本ではありますが、お金は、備える、借りる、ふやすためにも使えます。そういった機能を考えていくことで、不況時の家計リスクやインフレリスクなどにも幅広く対応できるようになっていきますので」

──投資はリスクが大きそうでちょっと怖いんですけど……。

「知らないと怖いイメージはありますよね。でもそれはあくまで”イメージ”ですよ。上限の金額を10万円などと決めてしまえば、それ以上損することは絶対ありませんから。最初に額さえ決めちゃえばね。また、投資をするなら早いうちに始めたほうがいいと思います。まあ、国民性として『お金を増やそうとするのは、はしたない』みたいな考え方も根強いですので、アメリカのように子どもの頃から学校でお金について習うといった変化はなかなか期待できないでしょうけれど、ある機関の調査にあるように、お金に対する不安感が世界で一番大きいのが日本人である一方で、お金について学んだり、家族や周りの友だちと話し、情報交換しないというのは、ある意味で自己矛盾であるように思います」

──お金のことって話しづらいですよね。同じ金額でも人によってそれぞれ価値が違うし……。

「お金に関しては、自分1人からの視点だけでは見えないことがあるんです。。たとえば1万円の食事をして、金額的に『高い』と思ったとする。でも他人から見れば『安い』と言える根拠もきっと見つかります。おいしい料理で、楽しい時間が過ごせて、ついでに商談もまとまれば、そのための1万円は『安い』かもしれませんよね。。都心に住むのと郊外暮らしをすることについても、都心は家賃が高い、だから敬遠すると考える人もいますけれど、一方には、都心に住めば、通勤で苦労しない、便利、都会の動きが感じられるといったメリットを感じる人がいます。そういう意見に耳を傾けて、自分にとってもっと価値のあるお金の扱い方を追求していくことが、大事なのです」

──郊外に住んでいると通勤だけでも結構な時間を使っちゃいますもんね。

「通勤時間の長い方は、その時間をお金に換算して考えてみるといいかもしれませんね。長時間通勤のメリット、デメリットを整理してみたら、もしかすると都心に部屋を借りた方が効率的かもしれません。どちらにせよ、お金の価値観が固まってしまわぬよう、プラスマイナス両方から見たり、自分と違う価値観を持つ人の考え方を参考にすることが重要です。できればお金のことを相談できる人が周りにいるといいですね。自分とは違う視点をくれる人は貴重ですよ」

──ちなみに家賃はどのくらいで抑えるのが賢いのでしょうか?

「理想は月収の25%以下だと言われていますが、3割前後までなら暮らしやすいのではないでしょうか。家賃は固定費なので、ランニングコストとして日々蓄積されていきます。日用品などの維持費もそうですが、一回では何百円、何千円の差だったとしても、年間通して、また10年、20年……と考えると、かなりの差額になります。『無意識』のうちに払っているものにはあまり目が向かないのですが、そういうところこそ『意識』するといいと思います。でも、ただ闇雲に貯金するだけでは生きる張り合いがなくなっちゃいますよね。だから抑えられるところは抑えて、買うときは買う! 『貯金のための貯金』は、ほとんどの場合、長続しません。かっこいい車でも趣味のものでも、買う目的を決めて貯めることが、実は貯金のコツなんです。「老後のため」というのもいいですよね。それはつまり、老後の安心と豊かさを「買う」ということですから」

──最近「結婚したいけどお金がなくてできない」という話をよく耳にするのですが。

「お金という点から見れば、それは発想が逆ですよね。貧乏な人ほど、結婚したほうがお金は貯まりやすくなります。結婚して共働きすれば収入は二人分になりますし、家賃や光熱費などそれぞれが支出していた分は、生活の拠点が一緒になることで圧縮されます。生活費は1人と1人が一緒になっても、2倍にはならないんです。結婚相手については、年収何百万以上がいい、何百万以下では無理といった判断基準を持つ人が多いのですが、重要なのは、『どれだけ稼ぐか』より『どういう使い方をしているか』なのです。食事のお金の掛けかたや買い物の仕方などを見ていくと、相手がどういう考え方を持ってお金を使っているのかが分かります。30歳で年収600万円なら平均(男性30〜34歳で453万円)より多いのですが、それでいて貯金が0円だったら、きっと使いかたに問題があります。だったら、年収400万円でも、30歳で500万円貯めている人の方が、結婚後、お金に苦労することは少ないかもしれません」

──稼ぐ額だけでなく、貯金額や使い方を見ることが重要なわけですね。では、30代で「せめてこれくらいは貯金しておきたい」という目安の金額はどのくらいですか?

「昔は年齢×10万円なんて言われていましたけど、いまはなかなか厳しいですよね。30代の平均貯蓄額は458万円ですが、現在貯蓄がないのであれば、まずは100万円を目標にするのがいいのではないでしょうか。また、30代からは特に生活レベルを上げるときこそ慎重に。結婚して子どもができるなど、家族の人数が増えると、生活規模は自然と大きくなり、支出も増えます。その際に、せっかくだから大きな家、高い車、子どもにはいい洋服、いい教育環境といった具合に生活レベルを上げたくなるのが人情なのですが、いったん生活レベルを上げると、そう簡単には下げられないのも人情なのです。階段をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。上がっていく際には、2段でも3段でも飛ばして上がれます。しかし、2、3段飛ばしで降りたらどうなりますか? 大ケガにつながりますよね。生活レベルについても、上りはラク、下りは危険。リスク管理という意味で、下がるべき時に危険が最少限に抑えられるようにしておくという意識が重要なのです」

──最後に読者へメッセージをお願いします。

「お金の扱いかたは多様ですし、向き不向きもあります。どういう風に生きたいか? 大事なことはなにか。自分のなかで優先順位をはっきりつけられるといいですね。私はフリーランスとして活動しているなかで、『約束(納期)を守ること』『人や環境に感謝すること』、そして『経済感覚を持つこと』の3つが重要だと思っています。また、自分だけでなく、関わる人みんなが儲かる商売でなければ続かないとも思っています。この本にしても、本体は1,200円で、読むのに2時間くらいかかりますよね。であれば、1,200円プラス、読むための時間を時給計算した分以上の価値がなくちゃいけません。少なくともその10倍、使いかたによっては1万倍くらいの効果が得られる本にするということが、実はこの本を作り始めた時の自分なりの約束ごとでもあります。本書のオビにも『30代で1250万円』と記していますが、本書で提案していることの中から、できること、興味のあることを見つけ、行動にうつしてもらえれば、1250万円という数字は思っているほどむずかしくありませんし、同時に、お金に関する不安もかなり軽減できるはずです。お金を正しく使いこなすことから広がる楽しみや豊かさはたくさんありますよ!」
(取材・文=飛澤良子)

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伊達直太(だて・なおた)
仙台市出身、東京都在住。魚座。A型。出版社勤務等を経て、2001年からフリーランスに。
雑誌や書籍の執筆と編集を行う。また、FP技能士として保険、証券等の広告物制作にも携わる。


 

『30代からのお金のトリセツ』著:伊達直太

 
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