「汁男優」という生き方

一流大学で量子力学を学ぶも、汁男優になった男

 美しい女優の顔に次々と降り注ぐ大量の精子……通称「ぶっかけモノ」と呼ばれるAVのジャンルがあることをご存知だろうか?

 「ぶっかけ」とは、AVなどで相手の顔面や身体に精液をかけることを指す言葉だ。昔からAVの1シーンとしての「ぶっかけ」は存在していたが、90年代中盤に某AVメーカーがAV内で脇役であったはずの「ぶっかけ」をメインにしたAVシリーズのリリースを開始、そこから多人数の男優が1人のAV女優に連続で射精するスタイルの「ぶっかけ」がジャンルとして確立した。そして、この日本で発祥したジャンルは海外でも「bukkake」という名前で定着し、今や世界標準の言葉として使われている。

 そんな「ぶっかけモノ」に必須である、「多人数の男優」、大量の精子を射精するためだけに出演する者をいつからか「汁男優」と呼ぶようになった。

 ザーメンをより遠くへ、より大量に、よりいやらしくぶっかける……。

 特にこだわりある汁男優は「ザーメン・アーティスト」、「汁神」、「白皇」などの二つ名で呼ばれることもあるという。

 今回、そんな汁男優の中に異色の経歴をもつ男優がいるという噂を聞いた。その男優は、某有名国立大学の大学院で量子力学を学び、現在フリーターだという。

 某AVメーカー経由で連絡先を聞き、早速アポを取り、会うことになった。インタビュー当日、現れたI氏(仮名)はどこにでもいそうな風体の20代後半の男性であった。

──はじめまして。まずは一流大学を出たのに、汁男優になったきっかけなどお聞かせ願えますか?

「はじめまして。僕の場合は大学院で、量子力学について研究していたのですが、博士課程でつまずきまして(笑)。研究にも行き詰まり、何か気晴らしを……と考えていたのですが、研究漬けの日々で彼女などもいなかったし、風俗に行く金もない、さてどうしたものか、と考えていた矢先にたまたまAVメーカーのホームページで汁男優の募集を見つけたのがきっかけですね。もちろんノリだけでなく、僕の研究している量子力学の分野はある粒子の軌道計算などにも利用されるので、ザーメンの飛び散る複雑な軌道が研究のヒントになれば……という考えもありました(笑)」

──緊張や抵抗などはなかったですか?

「抵抗感などはありませんでしたが、初めての現場はとても緊張しましたね。特に出演女優さんが好きな人だったので。こんな緊張感の中でちゃんと射精できるのか、と終始怯えていましたね」

──報酬などはあるのでしょうか?

「ボクが所属している汁親さんの下では射精一発に付き5,000円。ボクは他の人よりも性欲が強いので、一回の本番で20,000円ほど頂いていますね。ただし、未発射であったり、誤射してしまうと報酬は減額、最悪一銭ももらえないこともあります」

──コツや心構えのようなものはありますか?

「コツというか、大事にしているのは日頃の調整ですね。この仕事はやはり体が資本ですから、毎日2時間以上のトレーニングは欠かしません。食事はほうれん草など鉄分多めの食材が中心ですね。特に気を使っているのは前日調整です。僕の場合は、共演させていただく女優さんが出演されているAVを繰り返し見ます。ただし一切自分のナニには触れません。カーテンを締め、携帯電話の電源を切り、ヘッドフォンを使い、外部と自分を切り離し、ひたすらAVの世界に没頭します。そしてエビオスを大量に摂取して最低10時間の睡眠を摂ります。「心構え」と言えるかどうか分かりませんが、師匠、とボクがお呼びしている業界歴15年の汁親には『撮影中は自分が人間であると思うな、ザーメンを発射する砲台と思え』と教わりましたね」

──よろしければお体を見せていただけますか?

 と聞くと、I氏は快諾した上で上着をめくってくれた。なるほど。細いながらも引き締まった体だ。

──ペニスを見せてもらえますか?

「かまいませんよ。勃起させますか?」

──とりあえずノーマル状態を見せてください。

 するとI氏は躊躇なく一気にズボンを下ろしてナニを見せてくれた。平均サイズほどのペニスの下には大きな袋がぶら下がっていた。ここが男たちに夢を与えるザーメンの精製工場かと思うと感慨深いものがある。

 断りを入れて、玉袋を手の平に乗せてみると、ずっしりと重たい。睾丸もインタビュアーのものと比べると一回りほど大きいようだ。

「これでだいたい精子貯蔵量は70%と言ったところですかね。本番だと90%以上になるように調整していきます」

──勃起状態を見せていただけますか?

「いいですよ。60秒下さい」

 I氏はそういうと同時に仁王立ちのまま目を閉じた。そして30秒ほど経過したところで、直接の刺激などないにも関わらず、むくむくとナニが膨れ上がってきたではないか。そしてきっかり60秒後、I氏のナニは天を突くようにそそり立っていた。

 それはまるで手品のような光景であった。これも日頃のトレーニングの賜物だとI氏は言う。

「人に見られるのが仕事ですから。どんな状況であろうと強制的に勃起させるスイッチみたいなものが頭の中にありますね。一介の汁男優が、他の出演者さんや、スタッフさんに勃ち待ち(※男優のペニスが勃起するまで待機すること)させるわけにはいきませんから」

 I氏は下半身を露出させ、かつナニを勃起させたまま、爽やかに笑って答えてくれた。発言するたびに上下にピクピクと動くナニがとても印象的だ。

──今後のことなど聞いてもよろしいですか?

「そうですね。いつかは自分も汁親となって汁子たちを指導して行く立場になりたいですね。でも今はただ射精することが楽しいので、そこまで先のことは考えられません。できたらおじいちゃんになっても現場で汁男優を続けて行きたいですね。研究ももちろんいつかは再開したいと考えています。その際に汁男優としての経験が活かせれば最高ですね」

──最後にあなたにとって仕事とはなんですか?

「真剣勝負の場所……ですかね。僕らの出番は本当に一瞬なんです。我慢を重ねて、射精感がMAXになった瞬間に、どのように顔射すればいやらしいか、女優さんの顔のどの部分がまだ汚されていないか、を直前で判断し、かつ他の汁男優、出演者の邪魔にならぬよう女優に近づき狙った箇所へピンポイントに適量の精子をぶっかける……。瞬間の判断と行動が成否を分ける、ぶっかけモノだけに、まさに生死をかけた戦いですよ(笑)」

 最後に熱い想いを語り、I氏は颯爽と去っていった。

 アナタが次にぶっかけAVを見るときはぜひ汁男優にも思いを馳せて欲しい。彼らの一瞬に賭ける生き様は、きっとアナタのオナニーライフに快感だけでなく、新たな感動を生み出してくれることだろう。

『よくわかる量子力学(図解雑学)』ナツメ社

 
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