【テリー・天野のメンズ的映画評 第5回】

ポヨポヨ系萌えボディーとスレンダーボディーがしっとりと睦み合う姿は、まるで一枚画のような美しさ! 『ナチュラルウーマン2010』

naturalwoman.jpg『ナチュラルウーマン2010』 (C)2010松浦理英子 / Softgarage

 「ホモが嫌いな女子なんかいません!」といえば漫画『げんしけん』の名台詞ですが、いわゆる「レズビアン」を嫌いな人もあまりいないでしょう。スネ毛ボーボーなアニキ同士が玉の裏パッコンパッコン言わせてるような壮絶な画ヅラは視聴者を選びますが、可愛い”おにゃのこ”同士でキスとか軽いスキンシップなんかしてるサマは、画的に美しい上に興奮もするってもんで、昨年アニメ化された『青い花』『ささめきこと』、先日実写映画化がアナウンスされた『マリア様がみてる』等々、一般向け作品でも普遍的なモチーフとして、百合系の作品は市民権を得てるワケですな。

 あ、そうそう、海の向こうじゃドラマ『Lの世界』なんてのも大ヒットしてました。アッチのレズだと肉食獣っぽいイメージが強くて、日本のレズ好きとは相容れないイメージですが……(奴らセックスをスポーツか何かだと思ってるし(笑))。

 そんな百合系作品群の中でも、ひときわガチなポジションで女性同士の愛を描いて根強い人気を誇るのが、作家・松浦理英子の代表作ともいうべき小説『ナチュラル・ウーマン』ですね。その『ナチュラル・ウーマン』が、このたび再映画化されました!!

 「再映画化」と聞いてピンと来た方もおられると思いますが、実は本作、1994年にも一度映画化されていて、嶋村かおりと現ケラリーノ・サンドロヴィッチ夫人の緒川たまきによる耽美な絡みでカルトな人気を博した訳です。筆者の周りでも、緒川たまきの巨乳の虜になる奴続出で、みんな取り憑かれたかのように彼女の「スレンダーだけど出てるトコ出てる」ナイスバディを、ビデオテープが擦り切れるまでリピートしまくっていました。そういえば旧作の監督は、後に『発狂する唇』(99)や『血を吸う宇宙』(01)といった、違う方向でカルト化した作品を手掛け、近年ではドラマ『ケータイ刑事』(TBS系)シリーズ(04~)を手掛ける佐々木浩久でしたが、ベクトルは違えども衝撃度の強さではその後の作品群にも劣らぬインパクトを残しているのはさすがです。

 傑作の誉れ高い前作に対して、はからずも勝負を挑む形になった今回の『ナチュラル・ウーマン2010』でメガホンをとったのは、本作が映画初監督となる写真家の野村誠一!! これまで数多くの美女・美少女を撮ってきた野村氏だけに、期待するなっていう方が無理なモノ。しかも主演が『完全なる飼育~メイド、for you』(10)でも3Dで大胆な脱ぎっぷりを披露した亜矢乃だから、やっぱり期待するなっていう方が無理!!

 彼女が演じるのは、主人公のカメラマン・容子。原作や旧映画版では漫画家だった(実際、本編でも大学時代は漫研に所属して同人活動も行っている)彼女が、カメラマンに設定変更されているのは、監督の意向なんでしょうかね? そんな容子は学生時代の恋人だった花世(汐見ゆかり)と別れて以来、人との付き合いに対して及び腰。取引先の編集者(なぜか趣味はブラジリアン柔術!!)由梨子(英玲奈)とお互い惹かれ合いつつも、どこか一歩踏み出せない関係が続く中、偶然にも花世と再会してしまったことで、かつての濃厚な愛欲の日々や、辛く痛みの残る別れの記憶が蘇り、容子の心に揺さぶりをかけていく。彼女は再び花世とヨリを戻すのか? そして由梨子との関係は? 過去の記憶と現在が交差しつつ、悩んだ末に容子が取った行動とは!?

 え~、メンズサイゾーをご覧の方々ならもちろん気になるのが容子と花世のガチレズシーンでしょう。基本的に、オッサレーなお姉様方向けの作品だけあって、ガッチガチに”抜き”を求める方には少々物足りない感じのソフトコアなのは仕方のないところ。とはいえ、あの野田社長率いるサンズ出身ながら惜しみない脱ぎっぷりを披露してくれる亜矢乃の、ややポヨポヨ系萌えボディーと、『VOCE』『CREA』等でモデルとしてバリバリ活躍した汐見のスレンダーな肉体がしっとりと睦み合う姿は、ソフト系百合プレー好きには最高のご馳走です!! 個人的にはAVとかの男女の行為をただ換骨奪胎しただけのセックスよりも、本作のようなスキンシップの延長線上にあるようなプレーの方がリアリティがあるような気がして大好きです!! そこら辺、チンコついてる男の身として現役のビアンの方々に聞いてみたいような気がするんですけど、どうなんでしょうね?

 さらに、さすが野村誠一だけあって二人のベッドシーンのみならず、全てのカットに写真家としてのこだわりが感じられます!! 旧作も映像の美しさに定評があったワケですが、アチラの方が容子や花世、由梨子の微妙で儚い関係を淡々とドラマで描く事に重きを置いていたのに対し、本作の方は絡みのみならず、何気ない日常から風景に至るまで、ほとんどのカットが一枚画として鑑賞に堪える美しさ!!

 こんな書き方をすると、「それじゃ画だけで話の方はアレなの?」と勘ぐる方もおられるでしょうが、こちらの方ももちろんバッチリ。原作者が涙しながら太鼓判を押し、監督自身も惚れ込んだという脚本は、原作や旧作とも微妙にクライマックスを変えることによって、より容子と花世の関係を深く掘り下げていく。

 由梨子がブラジリアン柔術経験者だからといって、酔っぱらいオヤジ役の斎藤洋介や取材先の旅館の布団で容子相手にバンバンテイクダウンを取っちゃったり、大学の漫研から明らかに誤ったサブカル臭がプンプン漂ってたり(あんなヲタ臭さが微塵もない漫研なんかあるかよ!!)と、ツッコミどころも無いワケじゃないけど、耽美的な百合世界の中じゃそんなモノは些細なこと。無粋なツッコミなどせずに、巨匠が新たなステージで生み出した、美しくも儚い女同士の愛の世界に酔ってみてはいかがでしょう?
(文=テリー天野)

◆『ナチュラルウーマン2010』
監督:野村誠一/出演:亜矢乃、汐見ゆかり、英玲奈、木下あゆ美
製作年:2010年
劇場:シアターイメージフォーラム
公開日:2010年4月17日(土)~

上映時間: 1時間44分
配給:ゴー・シネマ

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