真面目で実直なサラリーマンが、三人の美しい「S」女性たちに翻弄され、人生を狂わされていく……そんなちょっと怖い物語、『SとM』。原作は「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載中のマンガで、現在16巻まで刊行されている。そんな人気作品が、原作の過激な描写とスリリングな展開はそのままに、完全実写映画化! 真っ当に生きてきた会社課長の下に配属され、彼の幸せな家庭を壊していく新入社員を演じた主演の川村りかに、話を聞いた。
──映画版を拝見したのですが、非常にドキドキする怖い映画でした。
川村りか(以下、りか様) オープニングが怖いですよね、まず。サスペンス調というか。
──『SとM』というタイトルから、いわゆる「SMプレイ」を連想していたのですが……。
りか様 やっぱり? みんな最初はそっちのSMかと思うみたいです。でも実は、SMの女王様のお話ではなくて(笑)、サスペンス&ミステリーなんですよね。ちなみに、登場する三人の女性のイニシャルは全員「S」なんですよ。私の演じた新入社員・沙耶(さや)、西本はるかさんが演じた人妻の佐和子(さわこ)、蒼井そらちゃんの演じる私の上司・咲子(さきこ)。そして、三人の女性に翻弄される課長の役名は誠(まこと)で「M」なんです。
──そういった意味も込められてるんですね。
りか様 まあ、私の演じる沙耶が誠を精神的にいたぶるという側面では、ソッチのSMとも言えますけど(笑)。
──エッチなシーンも多いですよね。特に、騎乗位で腰を振るような積極的なシーンが。
りか様 確かに、カラミは全部私から仕掛けてヤるパターンでしたね。カラミもキスシーンも今回が初めてだったので、最初は「私なんかで申し訳ないな~」と思いながら歯を磨いたりしてました。誠の家庭に押し掛けて、夫婦の寝室でセックスをするシーンでは、3時間も騎乗位の姿勢でまたがった状態だったんですよ。前バリを貼っているので、動くに動けなくて(笑)。ずっと膝立ちで股を広げた姿勢をキープしたので、次の日は筋肉痛。翌日、レギュラーの『おねだり!! マスカット』(テレビ東京系)収録で歩き方がヘンだったらしくて、「りか様、今日歩き方がヘンじゃない?」ってメンバーに指摘されちゃいました。「いやー、昨日、騎乗位3時間やっちゃってさ~」「そんなにやったの!? さすがだね!」って(爆笑)。
──爆弾発言ですね(笑)。初のカラミで、緊張はなかったんですか?
りか様 撮影が始まる前は、「どうしよう」って気持ちもあったんですけど、3時間もまたがってるとだんだんそういうのもなくなって。どうやったらキレイに見えるだろう、とか考えながら演技できましたね。あと、撮影中、過呼吸になったんですよ! 普通は喘ぎ声って自然に出てくるじゃないですか。でも、それを無理やり出してるんで、過呼吸みたいになっちゃって、終ったあとクラクラしました。それはしんどかったですね~。
──セクシー女優の蒼井そらちゃんに、濡れ場のアドバイスをいただいたりは?
りか様 それはなかったです。蒼井そらちゃんとは親友なんですけど、逆に演技中はあまり話さなかったです。お互いに、決して仲のいい関係の役どころではなかったので、監督から「仲が良いのは知ってるけど、撮影期間中はあまり一緒にいないようにしてくれ」と言われたんです。
──監督からは、他にどのようなアドバイスを受けましたか?
りか様 実はこの映画のお話をいただいてから、クランクインするまで一年、間が空いたんですけど。まあいろいろ、大人の事情でね(苦笑)。その一年間の中で原作のマンガを読んで、川村りかとしての沙耶をどのように演じられるか、自分なりに考えてたんです。その上で、監督に役作りについて相談した時に、「役作りは絶対にしないでくれ」と言われたんです。「川村りかとして、この役をやってくれ」「川村りかは今、どう思ってるのか、それを表現してほしい」と。だから、演技とはいっても、映画の中の狂気をはらんだこの女性は、ほとんど素の私なのかもしれない。
──りか様は、どっぷり役にハマりこむタイプですか?
りか様 もう撮影を終了して半年以上たったので、やっと(役が)抜けましたけど、当時はどっぷり入っちゃってましたね。現場でいきなり泣いちゃったこともありました。基本的に、私はポジティブな人間なんですけど、「もうダメだ」「もうできない」とか、ずっとネガティブなことばっかり発言してて、まるで沙耶に取り憑かれているような感じでした(笑)。完成披露試写会の時も、まだ抜けてなくて、とても見ることができなかった。最近になってちゃんと見直したら、「良かった、面白かった~」ってやっと思えました。
──イタコ的ですねえ。バラエティー番組では「りか様」と呼ばれて、強めのキャラクターが確立していますけど、今回の映画はそういうイメージを覆すような出来でした。
りか様 でも私は、女優業とタレント業とグラビアとかは別として考えてるんですよ。たとえばの話、三つのバイトを掛け持ちしてるみたいな感じです。だから、すべての川村りかはまったく別の人間だと思ってます。
──そういえば、この映画に出てる「S」の女性たちは皆さん、ハスキーボイスですよね。
りか様 そういえば! でも、私が一番マシじゃないですか!? 西本はるかさんは、鼻声と、かすれ声でイイ感じに色っぽいですね。そらちゃんはタダの酒焼けですけど(笑)。酒焼けなのに大声出して叫んだりするから、治らないみたいですよ。
──りか様は、お酒は?
りか様 私、一滴も飲めないんですよ。
──えっ!? それは意外です。
りか様 いろいろ種類を試してみたんですよ。でもダメでした。試すためにワインバーでバイトして自分で飲んでみたりとかしてたこともあるんですけどね。焼酎とか日本酒とかもダメでした。
──体が全然受け付けない?
りか様 アレルギーなのかもしれないんですけど、飲むと吐いちゃって、そのまま頭が痛くなって倒れちゃいます。カシスウーロンを2杯飲んだだけで、倒れます。でも、周りの友達が飲むコばっかりなんで、飲み会にはよく行きますよ。飲みの席は大好きだし、飲んで酔っ払ってる女の子もかわいくて大好きなんで。私が普段、プライベートで遊ぶ時って、みんなが最大限に酔っ払ったくらいがちょうどいいんですよ。
──つまり、りか様のテンションがシラフで相当高いということですか?
りか様 そうですよ、実は。オラオラ系ですかね。「オラお前ら早く酒飲めよ~」って、飲ませるタイプ。私の友達は、エロくてMなコが多いんで(笑)。私、男の人のいる飲み会って好きじゃないんですよ。男の人が女の子を口説こうとしている場面がイヤなんですよね。
──男子禁制なんて寂しいです。「男の人がいる飲み会が嫌い」ということは、合コンにも行かれないんですか?
りか様 行ったことないですね~。嫌いです。男と女がいっぱい集まって、●●です、××です、よろしくお願いしまーす、みたいな、そういうのがイヤ。オーディションみたいじゃないですか。たぶん、私、ヘンにロマンチストなんですよ。正直、合コンで出会いたくない。恋愛をするためにみんなが集まってるような場所はイヤなんです。
──どういうふうに出会いたいんですか?
りか様 ……みんなにすごい笑われるんですけど。本屋さんで、同じ本を取ろうとして手が触れ合うとか。あと、同じ業界の人ってあまり考えたことないんですけど、音声さんがマイクをつけようとしてくれて、手が触れてドキッとする、みたいな。
──乙女ですねえ。そんな出会い、なかなかありませんよね?
りか様 でも、私はいつも恋してるんですよ! いつも好きな人がいます。惚れっぽいほうかも。自分のタイプだなって思ったら、ソッコーです。
──りか様のタイプというと?
りか様 グレープフルーツの皮を剥いてくれる人!
──??? 具体的にお願いします!
りか様 普通の人は、グレープフルーツが目の前に置いてあっても、「あ、グレープフルーツだなー」と認識するだけだと思うんです。でも、そこで「あ、グレープフルーツだ。このコに食べさせてあげたいな」って、カタイ皮を剥いて私に食べさせてくれるという行為ができる人っていいなと。
──それって、第一印象では分からないですよね(苦笑)。
りか様 うん、だから最初はフィーリングですねやっぱり。「あたしこの人と付き合う!」と、一目見た時に思うんです。
──そうやって付き合ったとして、男女関係においては、りか様はSとMどっちですか?
りか様 絶対訊かれると思った(笑)。うーん、どっちなんでしょうね。以前、「Sは”サービス”でMは”満足”なのよ」って、あるSMの女王様に言われたことがあるんです。「そういう考えで言ったらあなたはMの方ね」って。さっきのグレープフルーツの話でもそうなんですけど、皮を剥いてくれる行為はサービスだから「S」、それで満足する私は「M」なのかもしれないですね。
◆映画『SとM』
監督/仰木豊
原作/村生ミオ
出演/川村りか、小田井涼平、西本はるか、蒼井そら ほか
上映/2010年3月13日(土)~ レイトショー
池袋シネマロサ http://www.cinemarosa.net
★3月13日(土)21:00~ 初日舞台挨拶決定!!
ゲスト:川村りか、小田井涼平、蒼井そら、西本はるか、仰木豊監督(以上予定)
*当日、午前11時30分より当劇場窓口にて整理券を配布
◆川村りか
1985年10月10日、東京都生まれ。『おねだり!! マスカット』(テレビ東京系)『アリケン』(同)など数々のバラエティー番組に出演中。3月19~20日に限定公開される映画『ローカルボーイズ』、映画『美しき女豹』など、映画女優として活躍の場を広げている。