1回だけのセックスを金銭で取引することは売春だが、愛人のような長期的な援助の場合には売春とはいえないというのが通説となっている。昭和30年代初頭のこと、「1カ月単位で金銭的に援助する」という名目で女性を紹介していたのが、大阪市阿倍野区で結婚相談所を開業していたAという男。1カ月ごとだからいわば愛人契約であり、売春には当たらないという理屈である。
ところが、この業者が摘発され、売春斡旋で起訴された。これについて、1審で阿倍野簡易裁判所は、「1カ月という基準であっても、その実態は売春として認められる」として、1万5,000円の罰金を命じた。業者のAはこれを不服として控訴するも、大阪高裁では控訴棄却。それでも納得できないAは、めげずに上告した。
そして昭和32年(1957)9月27日、最高裁は2審を認める判断を下し、Aの主張は完全に退けられた。
つまり裁判所は、対価を得て貞操つまりセックスを提供することを売春とみなし、その基準を1回または1晩というのが通常の認識である。これに対して、対価を決めた関係であっても、とくに期日を定めない愛人やいわゆる「2号」のようなものは、売春行為には該当しないと考えている。
しかし、1カ月という具体的に期間を限定したものは、不特定多数にセックスを提供するものと同じとみなされ、売春行為と認定しうる、というのが司法の見解というわけである。
すなわち、1回であろうと1カ月だろうと、半年でも5年でも、期間を限定しての愛人関係は違法とみなされる可能性があるということであろう。
このAが、この後も結婚相談所を続けていたかどうかはわからない。しかし、1カ月限定の愛人ビジネスを続けられなくなったことは確実だ。
(文=橋本玉泉)
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