仮想都市「マトリックス・シティ」詐欺とバーチャルセックスの今

3883135624_1565afcb47.jpg※イメージ画像 photo by hotgirls3d_dotcom from flickr

 京都府警は今月14日、無限連鎖講防止法違反(ネズミ講)の容疑で、「ライブリー」(解散、大阪市)の元会長・城間(しろま)勝行容疑者(37)ら4人を逮捕した。調べによると城間容疑者らは、

「30~40万円の端末機を購入して代理店契約をすれば、インターネット上の仮想都市『マトリックスシティ』に出店できる」

「仮想店舗の収入や広告料金のほか、新規会員の勧誘をしても報奨が貰える」

 などと謳い、約1,900人の会員から計7億円を集めていた。逮捕された4人はいずれも容疑を否認しているが、マトリックスシティ事業に実体はないという。

 さて、ライブリーが活動を活発にしていた2007年当時、メディアでは連日のように、マトリックスシティの元ネタといえる仮想空間サービスがPRされていた。今となっては響きも懐かしい「セカンドライフ」だ。セカンドライフは、米国リンデン・ラボが運営するバーチャル空間サービス。3DCGで作られた架空の世界を、3Dのキャラクター(アバター)を操作して自由に歩き回ることができる。日本では電通主導の元、

「○○社がセカンドライフ上に支店を出店」

「○○がセカンドライフ上で作品を発表」

 などといった宣伝文句が大々的に発表されていた。これだけ宣伝していたのだから、「セカンドライフはさぞかしスゴイブームだったのでは?」と思う人は多いだろう。しかし、セカンドライフは順調にユーザー数を伸ばせなかった。参加していた企業はセカンドライフから次々と撤退していき、ムーブメントを仕掛けようとした電通も、09年2月にセカンドライフの世界から引き上げている。

 セカンドライフは非常に自由度の高いサービスだ。ユーザーのアイデア次第で、アバターが装備できる衣装やアクセサリーをデザインして販売することができる。アイデア次第では、アミューズメント施設を作り上げることもできた。仮想空間内で使用できる通貨は実際の現金で購入し、逆に換金することも可能で、ユーザー同士で取引することもできた。バーチャルな土地の取引で現金収入を得ていた日本人もいたようだ。しかし、そういったチャンスを掴めたユーザーはほんの一握りに過ぎなかった。広大な3D空間を自由に歩き回るには、当時としてはそれなりにハイスペックなパソコンが必要だった。よしんば動作できたとしても、操作性が悪かったのだ。また、当初は英語版のソフトしか存在しなかったため、パソコンに不慣れな一般層には「難解なもの」として避けられてしまった。

 セカンドライフからのユーザー離れを促進している要因はいくつもあるが、中にはそれで熱心なファンを呼んでいる、とも考えられる諸刃の剣が存在する。セカンドライフ内で楽しめる「アダルト」な生活だ。ユーザーの操作するアバターは容姿、体型を自由に変更できる。また、前述の通り自作の衣装を装備させることも可能だ。セクシーな下着やコスチュームはもちろん、裸体のイラストを用意すれば(DJ OZMA方式で)全裸のアバターも作成できるというわけだ。また、衣装同様にアバターの動作(アクションやポーズ)を作成、配布することも可能だ。これを応用すれば、どんな四十八手だって再現できる。仮想世界で知り合った相手とアダルトチャットをしながら、画面上のキャラクターも結合するという寸法だ。

 正直なところ、従来のアダルトチャットとそれほどの差は感じられないのだが、ハマる人はとことんまでハマってしまうのだろう。英国ではついにセカンドライフ内でのバーチャルセックスが原因で、離婚してしまった男性までいるという。男性が(仮想空間で)売春婦とコトに及んでいたところを、(同じく仮想空間で)妻が目撃してしまったのだ。女性は後に英Times紙に「あれは究極の裏切り行為だった」と語っている。そもそも夫婦が出会ったきっかけもセカンドライフだったというから、妻にとって仮想空間での出来事は、現実と同じくらい「リアル」なことだったのだろう。

 ちなみに、セカンドライフ内ではそこかしこに性的なものが蔓延しているというわけではない。規制が緩く、混沌としていた時期もあったが、現在では全ての成年向けコンテンツが専用のエリアに隔離されている。セカンドライフがアダルトと一般向けの線引きを明確にする一方で、アダルト要素をとことんまで楽しむための、仮想空間サービスも登場している。カナダのUtherverse社が提供するUtherverse(旧「RedLight Center」)では日夜、成年男女のアバターが全裸・半裸で闊歩している。アクセスしたユーザーはチャットやアバターの着せ替えといった基本機能に加え、欲望のままに行動できるのだ。ナイトクラブでドラッグをキメるのも自由、不特定多数の相手とセックスをするのも自由。もちろんドラッグもセックスも仮想空間での体験であり、現実世界ではなんの快楽も味わえない。しかし、仮想空間内での出会いをきっかけに、現実でのセックスフレンドを見つけたいという層からは人気のようだ。

 さて、現状ではバーチャルセックスがセックスの代替とはなりえない。バーチャルセックスを通じて気の合う相手を見つけたら、最終的には実際に会いたいと思うのが本音だろう。現実のセックスを目当てにしているのであれば、掲示板やSNSを使って出会いを探した方が効率的だ。しかし近い将来、ネットワークを経由して快感を共有できるデバイスが一般化されたとしたら……。3Dテレビのブームが来そうなのだから、こんな技術だって普及してもいいはず! セクサロイドとどっちが先に普及するか、今から楽しみに待ちたいところだ。

『バーチャル・セックス Virtual Sex ヘア無修正版』

 
この際、バーチャルボーイも再評価して欲しい

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