「コンドラチェフの波」、と呼ばれる経済現象がある。自由経済の下では、およそ50年をひとつの周期として革新的な新しい技術が登場し、それにより産業の中心も変革していく、とされるものだ。蒸気機関や鉄道、電気の利用、さらにはインターネットといった発明は、このコンドラチェフ波の周期で説明出来るものだと言われている。
さて、人類の長い歴史の中で、20世紀ほどに、人々がドラスティックな変化を目の当たりにした世紀はない。2回の世界大戦と原子爆弾の発明は、政治や国家のあり方を大きく変え、世紀中葉以降に起こった家電品やコンピュータの発明は、庶民の生活を大きく変えた。
そんな中で、20世紀の人々は、未来の技術に対して、過度ともいえる期待を抱くようになった。宇宙旅行の一般化、空を飛ぶ乗用車、果てはワープ航行に至るまで。夢の技術に満ち満ちた21世紀を妄想しては、その到来を今か今かと待ち望んでいたのである。
そんな前世紀人たちの「未来の都市」を語る上で欠かせないのが、ロボットとの生活である。すでに我々の生活には、「ロボット技術」といえるものは数多く利用されているが、人間との見分けがつかないようなリアルなロボット、いわゆるアンドロイドについては、まだその利用は一般的ではない。
「セクサロイド」という言葉がある。
漫画家・松本零士のSF作品の題名にもなり、80年代のロックバンド「ヤプーズ」の曲にも歌われたセクサロイドとは、人間の女性の形をして、男性の性的欲求を満たすためのアンドロイドの一種だ。
現在では受付嬢やコンパニオンとして開発されていることの多いアンドロイドだが、正直な話、「ロボット受付嬢」では、もの珍しさ以外に特別な良さはない。情報を得るだけなら、他のユーザーインターフェースのほうが簡便だからである。
したがって、アンドロイドが人型として開発される動機は、人間の女性に見立ててのセックスに集約されていくのではないだろうか。
このほどついに米国にて、セックスを目的とした世界初のアンドロイド(参照:AFPBB News)が開発された。
報道の写真では下着を装着しているものの、「世界初のセックスロボット」と称され、アダルト展示会に出品されていることから考えても、下着の中に実用的な機構が装備されていることは想像に難くない。
世界初のセクサロイドとして長く歴史に刻まれるであろう「Roxxxy」嬢は、自らの肢体をもってして、ロボットとのセックスが机上の空論ではないことを示した。
一足早く、自作のセクサロイドとの行為を体験している男(参照:GIZMODO JAPAN)も英国にいる。
ダッチワイフとコンピューターをつなぐことによる簡易な作りだが、彼の場合には、彼女たちはセックスの道具であるとともに、真剣な恋愛の対象なのだと言う。姿かたちを別にすれば、人工知能である「アリス」嬢はまるで人間の女性のようであり、主人であるはずのZoltan氏(仮名)を振ったりもしているのだから、何とも未来的だ。
彼は自らの性的嗜好を「テクノセクシャル」と呼ぶ。もしかしたらこの言葉が、生身の女性よりも女性型アンドロイドを好むことを指す語として、辞書に載る日が来るのかもしれない。
それでは、『ちょびっツ』(小学館)や『ユリア100式』(白泉社)などといった「ロボットと恋愛する」マンガを多数生み出している我が国・日本ではどうなのだろう。
日本では、米国のように堂々とセクサロイドの開発をする機関こそないものの、応用される可能性が高い技術を数多く培っている。例えば、東京理科大の受付嬢ロボット「SAYA」(参照:市ヶ谷経済新聞)である。完全に人間に見えるかと言えば、まだまだ発展の途上にあるものの、米国ラスベガスの「世界初のセックスロボット」よりは、美人サンであることに間違いない。表情の豊かさでも、米国の技術を大きく上回っている。
二足歩行ロボットについても高い技術力を持つ日本だけに、セクサロイドは大きなビジネスチャンスになるかもしれない。それこそ、経済学者コンドラチェフが言及した、50年に一度訪れる革新的な発明が、セクサロイドの技術かもしれないのだ。
また日本は、宗教的規範を持たないという国民性もあり、世界の中でもセクサロイドの普及への抵抗が最も少ない国なのではないかと予想できる。したがって、セクサロイドを普及させる市場としても有望となる。
「完全無欠の従順な美女と、毎夜を共にする」
今のご時世にこんな夢を叶えられるのは、ごく一部の超イケメンと大金持ちだけだろう。だが、目下成長中のセクサロイド技術によって、すべての国民にこの機会が与えられる日が、じきに来るかもしれないのだ。
(後編へ続く)
エロこそ技術革新の原動力!