2005年3月7日の午前0時半頃、地下鉄千代田線湯島駅から程近い路上で、女性の悲鳴が闇夜に響いた。
「キャーッ!」
悲鳴を聞きつけて、近くの交番から3人の警察官が現場へと駆けつけると、そこには手首などから血を流している若い女性と、傍らに40歳くらいの男の姿があった。男は手に刃物のようなものを持っている。男はすぐに3人の警官に取り押さえられた。女性が男に刺されて負傷したことは明らかだった。
幸い、女性は腰や肩、手首など4カ所を刺されたものの、軽傷で済んだ。
殺人未遂の現行犯で逮捕されたのは、38歳住所不定無職の男性。刺された女性は、台東区に住む22歳のキャバクラ嬢であった。そして、男は彼女の常連客で、「1年前からほぼ毎日、彼女の店に通い、借金までして貢いだのに、まったく相手にしてもらえなかったので刺した」と供述した。その金額は、およそ2,000万円だ。そのほとんどは借金で、300万円を消費者金融などから、残りの1,700万円は知人などから借りていたらしい。
そこまでつぎ込んだにもかかわらず、そのキャバクラ嬢は彼を適当にあしらっていた。それに怒った男が、彼女を呼び出して話をしているうちに、口論となってあらかじめ用意していた果物ナイフで彼女を刺してしまったというのだ。
これには男にも同情の余地ありという意見もある一方、「キャバクラ嬢の彼女は何も悪くない」という見方もある。
そもそも、「2,000万貢いだ」と言っても、そのキャバクラ嬢があの手この手で男から金を巻き上げたわけではない。単に男の方が自主的に店に通いつめていただけで、しかもその店というのは、1時間のセット料金が4,000円から5,000円、指名料が2,000円、女性が頼む飲み物は1杯1,500円という、都内でよく見かける一般的なキャバクラだ。時には彼女に高級腕時計やブランド品など渡すこともあったというが、それも、彼女の方からねだるのではなく、男が進んで贈っていたとのこと。
しかし、キャバクラは金さえ払えば、女のコをなんとか出来るという所ではない。キャバクラ嬢の彼女も、男を単なるお客の一人としてしか見ていなかったようだ。
男は、借金がもとで会社を退職。住んでいたアパートも追い出され、上野近辺のカプセルホテルを転々とする生活をしていた。そしてある夜、彼女を自分が泊まっていたカプセルホテル近くに呼び出して、「懇意になってくれるよう」頼んだらしい。だが、何の感情もない、ただの「常連さん」に過ぎない男を、彼女は適当にあしらった。それが男の怒りを買い、犯行に及んだというわけだ。
くれぐれも、「女性は金でなんとかなる」などとは考えないのがよろしいのではなかろうか。
(文=橋本玉泉)
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