ラッシャーみよしの「エロ業界栄枯盛衰物語」第20回:1996年

事実は小説よりエロなり! 伝言ダイヤルの「武蔵野夫人」


事実は小説よりエロなり! 伝言ダイヤルの「武蔵野夫人」の画像1※写真はイメージです

 

 武蔵野夫人は震えながらぼくのチンチンをギュッと握りしめ、顔をそむけながらシコシコと上下に動かし始めたのであった……。

 な~んちゃって。今回はエロ小説のような書き出しですが、事実は小説より奇なり……というか、小説よりもエロなのでございます。

 1996年は、依然として「女子校生」の時代が続き、その主戦場はテレクラや伝言ダイヤルだったわけですが、その一方でSMというマニアックなジャンルも密かに浸透し始めていました。今回は「SM出会い系」の話ですが、その普及に貢献したのが特に、伝言ダイヤルなんですね。即物的なテレクラに対して伝言ダイヤルの場合は、留守電を何度も聞き合いようやく実際に会う……という手続きを踏むため、恐怖心から出会いに慎重になりがちなSMというジャンルに、ピッタリ合ったようです。

 その頃ぼくが愛用していたのは、大手テレクラ・チェーン「バレンタインコール」が運営していた、SM専用の伝言ダイヤル。そこで出会ったのが、冒頭の武蔵野夫人なんですね。

 武蔵野夫人というのは、大岡昇平の有名な小説のタイトルですが、もちろん発表時の1950年にタイムスリップしてSMをしたわけではございません。出会った女性が東京の小金井……つまり武蔵野地区の人妻だったからなんですが、もちろん、住んでいるところが武蔵野というだけでは「武蔵野夫人」にはなりえません。「夫人」になるためには、いろんな条件をクリアしなくてはいけないのです!

 お金持ちで、上品で、いい家庭の育ちで、教養があって、えーっと……まぁとにかく、今で言う「セレブ」のクラシック版みたいなものです(笑)。という点で、彼女はまさしく「夫人」だったわけですね。

 待ち合わせをしたホテルのロビーに行ってみると、30歳くらいの、なんとも清楚で上品な、かわいらしい奥さんが恥ずかしそうにぼくを待っています。

「お店を予約しておきましたから、私の車でまいりましょう」

 キャーッ。まいりましょう、ですぜ! 昼食をご一緒する約束だったのですが、ここはひとつ彼女についていくことに。赤い3ナンバーのBMW。後部座席のベビーシートが味を出しています。それに乗って、予約をしているというお店に到着すると、そこがこれまた品のいい老舗の日本料理屋さん。仲居さんに個室へと案内され、2人きりになり……。

「いやだわ、緊張しちゃって。お手洗いに行ってもよろしいですか」とふすまを正座で開き、正座で閉める。

 これこそ武蔵野夫人でしょ! いやはや、こんな高級夫人と下卑たぼくを近付けたのが、SM伝言ダイヤルだったわけですね。その時は「手コキしてくれる人募集」という伝言を出していたのですが(SM専門なので、もちろんこちらがM、女性は女王様というスタンス)、何度かやりとりをしている間に、村上龍や山田詠美の話題になり、彼女、いたずらで覗いたSMの世界に本気で興味を持ち始めたようなんですね。このあたりが伝言ダイヤルの醍醐味です。

 彼女はSMのまったくの初心者でしたが、どんどん刺激的な冒険をしたくなってしまった……。そして、冒頭のシーンが現出したというわけ。

 つまるところ、「SなんだかMなんだかよくわかんないけど、とにかく、行きずりの見知らぬ男にあんなことやこんなことをいっぱいされたい……」ということ。いろいろご奉仕させていただきました(笑)。

「夫と子供の顔が頭に浮かぶから目隠しだけはやめて」とは言われましたが、バイブだ電マだ縛りだ野外だエトセトラ……。

 でも、初めて会った時の約束の手コキが一番印象的。震えながらチンチンを握り締めて、

「これでいいでしょうか…」

 と囁きながら、手を動かした武蔵野夫人。いやあ、エロいエロい。

 えっ、イッたかって? イクわけないじゃないですか(笑)。

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