2度目の紅白出場を決めたAKB48。「会いにいけるアイドル」として出発した彼女たちも、ファンにとっては「雲の上の存在」になってしまった。彼女たちの出発点は、世界最大のサブカルチャーの発信地である秋葉原。ユニット名に地名を冠してこそいるものの、結局のところ、「地域に根ざしたローカルなアイドル」とはほど遠いものとなってしまったようだ。
さて、そんなAKB48の柳の下のどじょうを狙ってか狙わずか、21世紀に急増したのが、地方発の「ご当地アイドル」たち。
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特徴としては、地方局の番組への出演がメインであることと、「モーニング娘。」のような入れ替え制のアイドルユニットが大半だということ。メンバーの年齢層は10代が中心で、それらの要素を考えると、各地域の美少女の写真を集めた「美少女図鑑」とも近いものがある。
「AKBやモーニング娘。の影響も少なからずあるのでしょうが、むしろ全員が沖縄県出身だったSPEEDが、今の『ご当地アイドル』の先祖だと言えるかも。また諸説ありますが、一般的には、徳島の『ココナッツ』(現『ココナッツJr.』)が、元祖ローカルアイドルだと言われています」(アイドル雑誌編集者)
徳島の「ココナッツJr.」は、1995年より活動を続ける、古株のご当地アイドル。他の例に漏れず新陳代謝の激しいグループであり、現在の在籍メンバーの生まれ年は91年~94年で、結成時のメンバーは全員卒業している。東京では滅多に名前を聞く機会のない彼女たちだが、徳島県民の間での知名度と支持率は相当なものだという。
他の地方都市に比べても「ご当地アイドル」熱が高まっているのが、宮城県仙台市。「B♭」「REX」「mimi」など、総勢60人を越すご当地アイドルが所属する芸能事務所「ステップワン」が同市に存在し、宮城県を中心に多彩な活動を繰り広げている。
地方色豊かなアイドルといえば、青森県弘前市の「りんご娘」。ユニット名だけでどこのご当地アイドルかが一目瞭然の彼女たちは、メンバーの名前にも「つがる」「紅玉」「レッドゴールド」と、りんごの品種を用いる徹底っぷり。地元産業界の魂胆が丸見えだと言えなくもないが、地域性を活かした活動であることには間違いない。
ところで、『在京キー局』という言葉が示す通り、メディアの中心は東京にあって、芸能人が活動の拠点にするのも東京である。そんな中で、近所の可愛い女の子が地元のテレビで活躍するという『ご当地アイドル』ブームの勃興は、芸能活動のあり方として斬新に思える。その点はどうなのだろう。
「もちろん各ユニット、各メンバーごとに心境の違いはあると思いますが、『東京デビュー』だけを目標にご当地アイドルを続けている子も少なくない。郷土愛で、その地域で活動を続けたい、と思っている子ばかりではない、というのが実情ですね」(地方芸能プロダクション関係者)
すでに解散・引退してしまったご当地アイドルとしては、山形県酒田市の「SHIP」が挙がる。比較的初期のご当地アイドルであり、全国区でのブレイクという夢は果たせずに解散と相成ったが、インターネットで一時話題となるなど、後進アイドルたちに多大な影響を与えた。彼女たちをモチーフにしたドラマ『スキップ! 商店街が生んだアイドル』が、NHKで放送された際、メンバーとファンとの結婚、といった後日談も紹介された。
地元の仏壇屋が「SHIPお香」、呉服屋が「SHIP手ぬぐい」を発売し人気になるといったような、極めてローカルな経済効果はあったそうで、「支店経済を脱す」とまではいかなくとも、明るい話題作りには一役も二役も買っていたようである。
テクノポップアイドルユニットとして金字塔を打ち立てたあのPerfumeも、元は広島の「ご当地アイドル」。手の届かない在京アイドルに飽きた人は、まだまだピュアな「ご当地アイドル」株に手を出してみるのも悪くないかも!?
プレアイドルファンならずとも!