御年68歳の大御所写真家・篠山紀信に、「公然わいせつ」の容疑がかけられている。篠山紀信といえば、言わずと知れたヌード界のパイオニア。1991年に発表した樋口可南子のヘアヌード写真集『ウォーターフルーツ』(朝日出版社)、そして宮沢りえのヘアヌード写真集『Santa Fe』(同)が話題となり、「ヘアヌード」というジャンルを広く知らしめた。
問題とされているのは、今年1月に出版した写真集『NO NUDE by KISHIN 1 20XX TOKYO』(朝日出版社)。満月の夜、近未来都市としての東京に全裸の美女が降臨し、道路に寝そべったり墓地で佇んだりと、月光と戯れる妖艶な世界観が魅力的な写真集である。この撮影が、不特定多数が認識できる公共の場所で行われていたため公然わいせつ罪にあたる可能性があるとして、11月10日、警視庁が篠山紀信事務所等関係各所へ家宅捜索に入った。
同写真集を巡っては、無許可で撮影が行われていた可能性が高いということも問題視されている。撮影場所となった都立青山霊園は「ヌードなどの撮影は認めていない」とコメント、他にも撮影場所となった結婚式場を運営する都内の会社も事前申請はなかったとした上で、「申請があってもヌード撮影は断る」としている。
写真集に掲載されている内容そのものが法に触れるということではないようだが、出版から一年近く経った今、強制捜査に踏み切った理由は何なのだろうか。別の報道によれば、撮影時に現場付近を通りかかった通行人や近隣住民から「全裸の写真撮影が行われている」といった110番通報が複数寄せられていたという。その時に通報を受けた人間は現場へ急行しなかったのだろうか。また、アダルトビデオやエロ本の撮影が屋外で無許可のまま行われることも珍しくなく、そうした事例のほとんどは黙認されているのが現状だ。なぜ今、篠山紀信にガサ入れが入るのか? いささか不可解な事件である。
公然わいせつといえば、昨年4月、秋葉原の歩行者天国でTバック下着や尻を露出する過激なパフォーマンスを行ったとして自称グラビアアイドル沢本あすかが逮捕されたり、今年4月にSMAPメンバーの草なぎ剛が港区の公園で全裸になったとして逮捕される事件もあった。逮捕時、草なぎ剛は「裸になって何が悪い!」と叫んでいたというが、当然のことながら人目のある屋外で全裸を曝せば迷惑行為となる。
捜索を受けたことについて篠山の事務所はまだノーコメントを貫いており、篠山本人がどのような対応をするのか注目されている。ただ、プロである以上、無許可でゲリラ撮影を行うべきでなかったことは確かだろう。
不朽の名作