(製作:日活/監督:藤井克彦/公開:1981年)
80年代に入り、ロマンポルノは斜陽を迎えていた。そんななか、彗星の如く現れた女優が”にっかつの松坂慶子”と呼ばれた美貌の持ち主、風祭ゆきである。
巨匠・大島渚監督に口説き落とされ、27歳という遅めのポルノデビューを果たした風祭は、そのスレンダーボディーと整った容姿から「お高く止まった鼻持ちならない女」を演じることが多かった。そして、そんな役柄に与えられた濡れ場は、決まってレイプだった。
彼女の知名度を飛躍的に上昇させたのは、81年に主演した『ズームアップ 暴行白書』である。
何不自由ない暮らしを送っていたラジオの人気パーソナリティが、突如としてレイプ事件に巻き込まれる。その後、犯人からはレイプ時に撮影された写真を盾に脅され、苦悩の果てに相談した夫には愛想を尽かされてしまう。
同作で受難のヒロイン役を熱演した彼女は、ロマンポルノ終焉期まで数多のレイプ作品に出演し、”レイプクイーン”として確固たる地位を築いた。
誤解を恐れずに言えば、作品としての”レイプ”は必要不可欠なジャンルなのかもしれない。
もちろん、犯されているうちに感じてしまう……などという出来事は男性が願望として想像するファンタジーである。実際の強姦事件とは大きく異なり、あくまでも作品上の演出に過ぎない。
公開1978年)。次第にレイプ犯を待ち望む
ようになる心情の変化を小川亜佐美が好演
風祭自身、レイプ作品の演出には違和感を抱えていたようで、何度か監督に相談を持ちかけたという。しかし、当時の風祭ゆきの存在価値、そして人気は”薄幸”であり、それを受け入れざるを得なかったそうだ。
だが、その中でも彼女は抵抗のシーンをアドリブで増やすなど、自身の努力によって女性視点によるレイプの非道性、残虐性を表現していた。
暴行シーンは非常にリスクが高く、しばしば顔が腫れ上がったために撮影が延期になることもあった。しかし、彼女に限らず、多くの女優たちは強いプロ意識で臨み、レイプ作品をにっかつの人気ジャンルとして押し上げたのだ。
風祭ゆき以外のレイプ作品で有名なのは、小川亜佐美が主演を務めた『襲う!!』(78年)だろう。作中で小川は、同じ男に三度も犯された婦人警官を演じているが、レイプ犯が誰かわからないまま終わるという斬新なストーリーにも注目が集まった。
ポルノという位置づけにある以上、作品内に性描写は欠かせない。ジャンルにおいても団地、SM、女教師など多岐に渡っている。しかし、いずれの作品も「単なるエロ」にとどまらず、物語の流れに組み込まれている。
レイプ作品もまた然りであり、監督や出演者をはじめスタッフ一同が真剣に撮影に取り組んでいたのだ。
風祭ゆきの傑作4枚組
・バックナンバー
【第1回】 「団地妻」から始まったロマンポルノの歴史
【第2回】 SMクイーンと団鬼六の世界
【第3回】 濡れ場を経験した女優たち