新たなアイドルの潮流はここから産まれる!

奇跡の”アングラ”アイドルフェス鴬谷に降臨でヲタ芸師たちが乱れ舞う!!

together04.jpg『TOgether2 A→B→C』9月26日の模様
「quim/miko」のステージングに全身全霊で土下座するヲタたち

 9月の終わり、まるでロック・フェスティヴァルのアイドル版のようなイベント『TOgether2 A→B→C』が開催された。サエキけんぞう主催によるこのイベントは、9月24日~26日まで行われ、日替わりでいわゆる「地下アイドル」が出演するという無謀とも思える企画。地下アイドルとは、メディアにはほとんど露出せずにライブやイベントなどを中心に活動するアイドル。今ではすっかりメジャーになったAKB48やPerfumeもかつてはこの地下アイドルに位置していた。

 地下アイドルのライブやイベントの現場では、いわゆる”ヲタ芸”が盛んに打たれる。メジャーアイドルのライブとは違い、会場の規模が比較的小さいことが多いが、アイドルを愛するヲタク(以下ヲタ)たちの情熱は、距離が近い分メジャーアイドルへのそれ以上に熱い。秋葉原に限らず、全国各地の地下アイドルが集結し3日間もイベントを行うとなれば、現場は一体どんな状況になるのか……最終日である9月26日、会場である鴬谷の東京キネマ倶楽部へと足を運んだ。

 会場に一歩足を踏み入れると、そこは総勢500名はいそうなヲタたちでぎっしり。彼らが必死にサイリウムを振り、OAD、ケチャ、サンダースネーク、MIXといったヲタ芸をしまくる、普通のスポーツよりも体力を消費しそうなほどハードコアな現場だった。ステージ転換中のDJプレイ時もテンションが落ちないどころか、ときにコールや合唱が巻き起こるパワフルさだ。

 

 まずはフリーで活動する電波アイドル「多摩川しず香」やアイドルが運営するカフェとして話題を集めている「アイドルカフェ天球」の面々がアニソンのカバーなどでフロアを盛り上げる。「MIZUKA」は名古屋の地下アイドルシーンの熱さを伝えるようなステージ。大阪を拠点に活動しながらも、東京でのソロイベントで100人以上を動員したことで注目される「amU」は、エレクトロなサウンドと自分たち自身で考案したキュートな振り付けによるパフォーマンスを見せた。地下アイドルとは言い難いが、歌姫「ELISA」もテレビアニメ『ハヤテのごとく!』のオープニングテーマソングなどの豊富なアニソンレパートリーでフロアを熱くさせた。「quim/miko」は、YouTubeやニコニコ動画でも高い人気を誇る同人音楽サークル「イオシス」のメンバーとして活動するquimを中心に、和風ハードロックやいわゆる「電波ソング」を次々と繰り出し、会場は一気にヒートアップ。ステージに向かってヲタが一斉に土下座をする場面は、厳粛な雰囲気ですらあった。

together01.jpgアイドルカフェ天球
together02.jpgMIZUKA
together03.jpgamU

 さて、地下アイドルにはふたつの大きなジャンルがある。アニソンやゲームのテーマソングを歌い秋葉原文化との親和性が高い”アキバ系”、そしてアキバ的要素と距離を置く”地下系”だ。今回の『TOgether2 A→B→C』には、地下系を代表するアイドルとして「Chu!☆Lips」が登場。激しいモッシュだけではなく、ヲタがヲタを持ち上げる「リフト」が起き、さらにはヲタが騎馬を組んでフロアを走り回るなど、大人の運動会さながらの光景を見せつけた。

together05.jpgChu!☆Lips

 終盤にはモモーイこと「桃井はるこ」が登場。原宿や秋葉原での路上ライブ活動からアイドルという地位にのし上がり声優デビューも果たしている、いわば地下アイドルの先駆者的な存在である彼女には、もはや女王の風格すら漂う。モモーイが自ら背面ケチャやサンダースネークを発動し、観客を煽るとヲタのモッシュやジャンプもいっそう激しくなり、フロア後方では、円状になってぐるぐる走り回るヲタたちも。数えきれないサイリウムが桃井はるこに向かって振られ、さながらウルトラオレンジの草原に桃井はるこが降臨したかのようだった。

together07.jpg桃井はるこ
together09.jpgモモーイ渾身の背面ケチャに、フロアの興奮も高まる

 桃井はるこから秋葉原の精神を託されてトリを務めた「ディアステージ・オールスターズ」は、連日ヲタ芸ライヴイベントなどを開催する秋葉原の店舗「ディアステージ」から生まれた、アキバ系アイドルの最新型ユニット。サエキけんぞうがプロデュースする古川未鈴を始めとして、様々なソロ・アイドルやユニットが登場してイベントの最後を飾った。終演後も、オタククラブイベント「DENPA」で高い人気を誇った「DJシーザー」がフロアを煽り、ヲタたちが一斉にステージへ上がるというハプニングも。ディアステージ・オールスターズとヲタが一緒にステージでヲタ芸を打つ眺めは壮観だったが、会場側からクレームがつき、サエキけんぞうが「二度と会場が使えなくなるんで!」とステージから降ろす事態に……。こんなラストも地下アイドルに特化したイベントならではだろう。

together08.jpg古川未鈴(ディアステージ・オールスターズ)とサエキけんぞう

 3日間にも渡るイベントを終え、主催者のサエキけんぞうは

「『A→B→C』というコンセプトに沿った盛り上がりをしたなと思いますね。やはりキス、ペッティング、セックスですね」

 と、段階を踏んで絶頂に達することができたと自負している。今後の地下アイドルの可能性について訊ねたところ、次のような答えが返ってきた。

「コンセプトがかなり枝分かれしてきていて、どのグループが残るかはわからない。Chu!☆Lipsには本格派の地下アイドルの魅力を再確認できた。(24日に出演した)Starmarieのようにアイドルの原点を守っているグループが良かったですね。その一方で、どこに向かうかまだ方向の定まっていない、未知数のアイドルもいて、今は風向きが変わる時期なのかなと思いました」(サエキ)

 サエキけんぞうはMCで「ここは子宮みたいなもんだから」と発言していた。アイドルの次の可能性を産み出していく子宮にたとえられた『TOgether2 A→B→C』を経て、今後のアイドルシーンに新しい胎動が起きることは間違いないだろう。

(文=宗像明将)

men's Pick Up

オリジナルコンテンツ関連トピック