アニメ業界で一世を風靡した『涼宮ハルヒの憂鬱』のDVD化をめぐって、秘かな騒動が勃発している。『涼宮ハルヒの憂鬱』は、2006年から「1期」が放送されて大ヒットした作品だが、問題となっているのは今年4月から放送されているいわゆる「2期」における【エンドレスエイト】というエピソード。本作品が収録されたDVDのAmazonレビューが、発売日前(9月25日発売予定)にもかかわらず荒れに荒れているのだ。
この【エンドレスエイト】は、そもそも原作の『涼宮ハルヒの暴走』に収録されている短編。夏休みの終盤を1万回以上もループしてしまうという筋書きなのだが、なんとアニメにおいても7回にわたって同じストーリーを繰り返して放送し、8回目になってやっと解決するというあまりにも大胆な展開をした。実際には8回ともまったく同一のものを流しているわけではなく、作画や声優の録音を新しくしており、制作する京都アニメーションの細かいこだわりを評価する声もあったが、ストーリー自体は同じ話の繰り返しなので「さすがに飽きた」という意見が圧倒的に多かった。
1期で演出を務めていたクリエイター・山本寛の発言も波紋を呼んだ。彼はアメリカで今年7月19日に開催されたアニメイベント「OTAKON 2009」に出席した際、「自分が京都アニメーションに在籍した頃からすでにこのアイデアがあり、自分は2回が限度だろうと反対した」という主旨の発言をしている。
スタッフの反対を無視し、ファンを唖然とさせながら放映された【エンドレスエイト】だが、DVD化にあたり、1枚にたった2話しか収録しないことが判明し批判は拡大。つまり、DVDをコンプリートするためには同じ話であるにもかかわらず4枚もDVDを購入しなくてはならないのだ。そのため、アマゾンのカスタマーレビューは発売前から70件以上の評価が付き、ほとんど炎上状態になるという異様な状況。このカスタマーレビューでは作品への賛否だけではなく、販売元である角川エンタテインメント及び角川書店の商法を批判する声も多い。「売り方としてはサイテーすぎw」「あまりにも購買層をバカにしていると言わざるを得ない」「ただでさえ不況の最中、こんなバンク(註:動画を使い回して使用すること)もどきなアニメに大枚はたくのは、余程の金持ちかバカだけです」といった具合だ。
こうしたファンの落胆を、角川書店はどのように受け止めているのか?
「この作品については徹底的な秘密主義を貫いているので、8話繰り返した意図や2話ずつ収録にして4枚のDVDとする明確な理由は、社内でもごく少数の人間しか知らされていないんです。ファンの方々からそういった声が上がっていることは知っていますが……」(角川書店メディア局アニメーション部)
――このような無謀な販売方法で、1期のようにDVD売り上げは伸びるのでしょうか?
「うーん……売れてほしいなあ、としか言えませんね」(同)
だが、1期からのファンであるAさんは「ただテレビ欄を埋めるだけの何の魅力もないアニメになり下がってしまった。1期はDVDを限定版で全部揃えたけれど、YouTubeで見ればいいレベルなのでもう2期はDVDを買いません」と切り捨てる。
角川といえば、一時はニコニコ動画等でUPされるMAD動画を「公認」したことでアニメオタクの心をガッチリ掴んだかのように見えた。だが残念ながら今回の騒動で彼らの反感を買ってしまったことは否めないだろう。『涼宮ハルヒの憂鬱』は良くも悪くも日本のアニメ史に残る作品となったのかもしれない。
買っちゃうかどうかはアナタ次第