映画「戦場のピアニスト」(第75回アカデミー賞監督賞)などで知られる監督ロマン・ポランスキー(76歳)が、26日、チューリヒ映画祭に出席するために訪れていたスイスで司法当局に身柄を拘束された。
容疑は、1977年に俳優のジャック・ニコルソン邸(アメリカ)で当時13歳の子役モデルに淫らな行為をしたというもの。78年に逮捕状が出され逮捕、裁判では司法取引により法定強姦の有罪判決を受けたが、その後、映画撮影を偽り保釈中にアメリカを出国し、ヨーロッパへ逃亡。2005年に国際指名手配されていた。
ロマン・ポランスキー監督の人生は壮絶のひと言だ。
第二次世界大戦時、母親はアウシュビッツで虐殺、自身も、ドイツ占領下のフランスで「ユダヤ人狩り」から逃れるため転々とし、2度目の結婚となった女優シャロン・テートは、チャールズ・マンソン率いるカルト教団に惨殺されている。しかも彼女はポランスキーの子を身ごもっていた。このテート惨殺事件が起きた1969年からわずか8年後に件の淫行事件が起こったとされているが、ポランスキー自身は「少女とその母親による恐喝の対象になっていた」として冤罪を主張した。
今回のこの逮捕に関し、スイスの映画監督協会は「醜い司法の茶番であり、巨大な文化的醜聞」という声明を発表し、監督が1978年に市民権を得たフランスは、監督の身柄がスイスからアメリカに移る前に、外交ルートを通じ穏便な解決方法を模索し始めるなど、国の垣根を越え擁護の気運が高まってきている。
仮に引き渡され有罪となった場合、懲役1年から50年の実刑判決が下される可能性もあり、現在の76歳という年齢を考えた場合、映画監督としての人生は終わるに等しい。ネット上では「クリエイターの人格と作品とは無関係」「チャップリンだってロリコンだ」「日本の有名なアニメ監督だって(自主規制)」など一風変わった擁護の言葉も飛び交う事態となっている。