新風営法施行前夜の歌舞伎町で初のオール・ロケーションを敢行。
風俗最前線で見え隠れする少女たちの姿をリアルに映像化し、話題になった。
トルコからやってきた1人の留学生が「トルコブロ・ソコク・ブジョクシテマース!」と声を上げたことがきっかけで、川崎の特殊浴場組合が「トルコ風呂」の名称を使うのをやめたのは、1984年の冬のことでありました。そして、年があけて「トルコ風呂」は新しい名称「ソープランド」になって再出発したわけですが、まだ寒い、寒い2月の半ば、ソープランドでゆったりと温かいお湯につかっているお大尽たちを尻目に、貧乏な風俗ライターたちはガタガタ震えながら夜の歌舞伎町に集まっていたわけですね。
目的は、「果たして歌舞伎町のネオンは、午前0時に本当に一斉に消えるのか」ということを確認するため。
そうなんです。この日こそ、日本の風俗史を語る上で避けて通れない日、新風営法施行の当日だったわけですね。1985年2月13日午前0時。その日からのありとあらゆる風俗店は、午前0時から日の出まで営業をしてはいけないということになったのです。
でも、みんな半信半疑だったわけですよ。昨日まで夜中じゅうやってたソープやヘルスやのぞき部屋が、いきなり良い子になるわけがない、絶対にもぐりで営業する店があるはずだ、と思っていたわけですが、なんと午前0時になるや、パタパタパタとネオンが消えた!
「おおっ!」
どよめきが起こります。この日が施行日だと知らないサラリーマンもいたようで、突然のことに右往左往。
飲み屋のネオンはついていますが、風俗のネオンはどぎついですから、これが消えるとなると一瞬真っ暗闇になったような錯覚を起こします。
「本当に消えたね」と東スポさん。
「店内に客はまだいるのかな」とアサ芸さん。
「深夜に風俗行きたくなったらどうすればいいの?」とラッシャー。
実のところ、新風営法の目的は夜中の営業をやめさせることではなく、これまでソープランドやピンサロや各種売春にしか対応していなかった風営法を改定して、新しい風俗であるノーパン喫茶やファッションマッサージ(ファッションヘルス)、のぞき部屋などを新たに警察の監視下に置くことでした。
言ってみれば、それまで野放しだった新しい風俗に首輪がつけられ、以降、これらの業種は厳しく管理されることになったわけです。
でも、風俗というかエロごとというのは面白いもので、もっとも犯罪性の高いはずのホテトルが、これによって大もうけ。もともと、ホテトルは売春ですから、営業時間うんぬん以前に存在してはいけないもの。しかし逆に、深夜に遊ぼうと思ったらホテトルしかなくなってしまった……というおかしなことになってしまったんですね。
「これからは、真夜中の遊び特集はホテトルだね」と某夕刊紙記者。
「あっ、うちは今月ホテトル特集ですよ」とラッシャー。
実際、取材のために歌舞伎町に来ていたぼくの雑誌は、第1特集が「新風営法の歌舞伎町」、第2特集が「ホテトル」(笑)。
(制作:1985年/配給:にっかつ)
監督:浅尾政行
出演:梅宮辰夫、小松方正、佐藤浩市
いいんですか? 売春ですよ、売春。それが堂々と女の子の写真入りで大特集。
また、記事がすごい。「オマ○コしたくなったら○○ちゃんが待ってますよ~」って、ぼくら売春幇助? 確かに、エロ本作っていると警察からしょっちゅう呼び出されますが、ある時、ホテトルの電話番号を間違えたら、それがたまたま大手電気メーカー会長の自宅の電話番号だったということがありました。
呼び出され、さんざん説教され、最後に言われた言葉。
「お前らな、売春幇助でいつでも引っ張れるんだからな!」
ひ~っ。そして、その翌日は、当のホテトルの経営者に呼び出され。
「電話番号間違えやがって。どう落とし前つけるんじゃ、コラ!」
風俗ライターは大変です。