そのバンド名と『シフォン主義』というタイトルに、最初は「よくあるタイプのインディーだろう」とタカを括っていたんですよね。なんというか、「うっかりちゃっかり」と「背伸び」が同居している感じがそれっぽくて。でもひょんなことから一聴してみたら「これイイじゃん!」と。
けたたましいダンスミュージックや小難しいポストロックに疲れ気味になっていた耳に心地いい、というのが第一印象。
自己主張の押し売りや安易で薄っぺらなリスナー応援要素がまったくなく、モジリや語呂合わせを多用して展開が予想できない歌詞も面白くて。
そして何といっても、音域が狭くビブラートを使わない、やくしまるえつこ嬢のロリータ系ウィスパーヴォイスにすっかりソソられてしまいかなりヤバイのであった。
さて、セカンドの『ハイファイ新書』が出る頃にはかなりの有名バンドになっていて、各CDショップが猛プッシュ。なのにメディアへの露出が全くないという情報枯渇状態。さらにネットにアップされた画像も削除されるようで、あのバンドの実体、そして美声の正体はライブでしか拝めないのであった。
というわけで、モタモタしてるとチケットが買えないんですが、オークションでの大人の落札を経て、いざナマ相対性理論を見に行ってきました。
満員のリキッドルーム。ゲスト2組の演奏が終わり、暗転した舞台にライトが灯り相対性理論メンバー登場。思わず歓声をあげる私。と、周りから刺すような視線が……。戸惑いつつも曲が始まったのでゆらゆら身体を動かすと、今度は露骨な溜め息。「え? なに?」と驚き周囲をうかがったところ、なんと皆さん直立不動なんだな。いやぁさ、「ライブではこうしなきゃいけない」なんていう気はさらさらないけど、観客も会場の装置の一部なんだから、ここまで水を打ったようなベタ凪状態だと演奏する方もやりづらいだろうに。まるえつ嬢がペットボトルに口をつけて水を含んだ瞬間のみ「ざわ……」というリアクションってさ……。
で、まるえつ嬢のみをガン見して、他のメンバーやオーディエンス全員がまったく眼中にない「オレとまるえつ」という世界に浸ってるヤツが多かったような。そりゃ、オイラも彼女にヨコシマな感情がないわけじゃないけど、そういうことは家でやれ! つっても、メディアに露出してないので、ライブ会場でしか「オレとまるえつ」ができないんだろうけど。
『STUDIO VOICE』には観客の様子が「肌を密着させるように立ちすくんでいた」と書かれてありましたが、こういうことだったのでしょうか……。
ただし、物販ブースだけは目に見えて盛り上がっていました。皆、声を出して身体を動かしてグッズ購入に必死でした。TシャツはLサイズが早々に売り切れてSとキッズLしか残ってないのに、それを買ってた男子たち。それ、一体どうするの?
(ライター/シノヤマ・ピピン)
ゆる~い中毒性
「STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2009年 07月号」
朗読CDついてマス♪
相対性理論(そうたいせいりろん)
東京都を基点として活動するポップ・ユニット。みらいレコーズ所属。2006年9月結成。
「ポストYouTube時代のポップ・マエストロ」を名乗る。相対性理論 オフィシャルHP