「昔、浦島太郎という若者がいじめられている亀を助けると、亀はお礼に太郎を竜宮城に連れて行った。竜宮城で歓待されたあと、乙姫から玉手箱を受け取り浜に帰った。そして『決して開けてはいけない』と言われていた玉手箱を開けたところ、太郎は老人姿になってしまった……。
日本むかし話 参』(竹書房)
これは、誰もが知っている昔話『浦島太郎』のあらすじである。しかし、江戸時代以前には、もっとエロい要素が含まれていた。例えば、竜宮城に行ったあとは「タイやヒラメの舞や踊りを見て楽しんだ」とされているが、近世以前の太郎は、女たちに囲まれ、乙姫とただならぬ関係になるなど、かなりエッチな”歓待”を受けたという記述もある。だが明治時代に入り、竜宮城での太郎の行いを子どもに話すのはふさわしくないということで、淫らな記述はすべて書き換えられてしまったのだ。
ちなみに『浦島太郎』の歴史は古く、『日本書紀』に記されていたが、当初は風流な男「浦島子」と神仙美女の官能的な愛を描いた物語だった。しかし、時代の世情などを反映し、今では似ても似つかぬ作品になってしまっている。
他にも、「これはエロすぎて子どもには刺激が強い」と、話が改変された昔話は少なくない。『桃太郎』は、川上から桃が流れてきて、そこから桃太郎が生まれたということになっているが、明治時代初期までは、桃を食べて若返ったお爺さんとお婆さんの間に桃太郎が生まれたという回春型の話の方が広く伝わっていた。
また、『わらしべ長者』には、こんなストーリーもある。わらしべを名馬と交換した男が大きな屋敷に立ち寄ったところ、屋敷の主人から「都に上るので、馬を貸してほしい。もし私が1年以内に帰ってこなかったら、この屋敷と娘を与える」と言われた。男は言いつけを守り、娘に手を出すこともなかったが、間もなく1年になろうとしたとき、男は我慢しきれなくなり、娘を手篭めにしてしまった。するとその直後、男に天罰と言わんばかりに雷が直撃し、男は黒こげになって死んでしまった……。
現在伝わっている昔話には、「淫猥」や「残酷」な要素はことごとく剥ぎ取られ、美談だけが残っている。しかし、本当の昔話を知れば、人間がいつの時代も身勝手で強欲、嫉妬深くて無責任なものだということが、ハッキリとわかることだろう。
老婆を撲殺するタヌキ(「かちかち山」)、
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