安位カヲル連載ネイロ#2「胸、高鳴る」
コロナ化になってからテレワークがずっと続いていた私、大沼京子(24)は今日久しぶりに出社する。前はいつも着ていたスーツもなんだかすごく新鮮だ。
朝はいつもRIRIの「RUSH」をかけて自分の中の気分をアゲる。いよいよ久しぶりの出社だ。
なんだか楽しみになってきて、いつの間にか早歩きに。会社に着くと黙々とパソコンを叩いてる一人の男性の後ろ姿がみえた。もしかして…。
「山本さんですか?」
おそるおそる声をかけると山本さんは少しびくっと体を跳ね上げこちらを振り向く。
「おー! 大沼さん! 久しぶり!」
そういった山本さんの笑顔は久しぶりに会うからか、なんだか照れ臭そうだった。
「ご無沙汰です! 今日はあと誰が来るんですかね〜」
私がそう言うと山本さんは、
「あれ? 聞いてないか? 俺たち今日は二人だけだよ」
という。
私はにやにやしそうになる唇を押さえる。そう、私は入社したての頃から山本さんに密かに憧れていたのだ。
そんな彼と二人きりになるチャンスなどほぼない。
私は勇気を出して山本さんを食事に誘うことにした。
「あの、山本さん。お仕事終わったら一杯付き合ってくれませんか?」
すると彼はすんなりとOKを出してくれ、私は心の中でガッツポーズをした。
仕事が終わり、私と山本さんはカクテルが美味しいと有名なバーへ行くことに。
「山本さんてお酒強いんですか?」
「うーん…まあまあ強い方だとは思うけど。なに? 勝負したいの?」
山本は悪戯っぽくにやり微笑む。この、笑顔がたまらない。
それなら2時間後、私はベロベロになっていた。
山本さんは私を心配してくれ、帰るように促してくる。でも私は帰りたくない。少し甘えた声を出しながら、山本さんに触れた。
「おいおい…困ったな。大沼、俺も一応男なんだぞ?」
そう言う山本さんの顔はなんだかいつもと違って見えた。
「お会計で」
山本さんが財布を出す。
「え! 嫌です! 帰りたくないです!」
私が少し激しく、そして悲しそうに言うと彼は、
「…二人きりになれるとこ、いくか?」
と言ってきた。
お酒も入ってるからか、その後の展開は早かった。
店を出て早歩きで適当なホテルを探し、部屋に入るとすぐに抱き合い唇を重ねる。
「ずっと…こうしたかったんです…」
そう言った山本さんの顔はお酒だけのせいじゃないとわかるくらい赤くて、その一言で私の理性は吹っ飛んだ。そして私の頭の中にはm-floの「No Question」が鳴り響く――。
【文・選曲=安位カヲル】
エスワン専属女優。Twitter@Kaoru2dive/Instagram@kaoru_yasuiii