(文=安位カヲル)
安位カヲル連載ネイロ#1「一夜限り、夏の夢」
内気で女性と喋ることすらほぼなくセックスなんて夢のまた夢、そう思っていた。
ユウゴ(20歳/大学生)は大学の飲み会でまた誰とも喋ることなくぽつんとひとりで酒を飲んでいた。
一応毎回誘ってくれる人はいるけれど、ただ気遣っているだけというのわかっていた。
でも自分だって男、酒が入ればなにが起こるかわからない。
だから毎回一応飲み会には参加をし、そして毎回ひとりで帰るという事を繰り返していた。
そんな日常が少しだけ壊れた。
ある日、飲み会に見慣れない女性がいることに気づいた。
彼女は黒縁のメガネをかけていてショートヘアにピチッとしたポロシャツにジーパンをはいていた。少し地味そうに見えるが、そのボディーラインはとてつもなくセクシーでまさにグラビアアイドルみたいだった。
でもなんとなく親近感みたいなものがあって、ユーゴは勇気を出して酒の入った体を奮い立たせて彼女に話しかけた。
彼女の名前はマサミ(20歳/大学生)。すごく気さくに話してくれて、やがて話していくうちに自分と趣味が合う事に気づく。そして、「一番好きな曲を一斉に言おう」と提案してみた。
マサミは「えー! なにそれ!」と驚きながら、「いいよ」と微笑んだ。
「くるりの『琥珀色の街、上海蟹の朝』!」
自分の一番好きな曲が被るなんて思ってもなかった。ふたりともそう思った。それからユーゴとマサミは顔を見合わせながら大きく笑った。
(彼女しかいない!)
そう決意したユウゴは勇気を出して彼女の手を取り言った。
「このあと、、ぼ、ぼ、ぼくの家に来ませんか!?」
べたなほどの動揺。そんなスマートとは言えない誘いを受けたマサミは、少し微笑んでユウゴの耳元に近づき「いいよ」と言った。
2人は飲み会を抜け出し、ユウゴの家へ。
「へー! めっちゃレコードとかあるね!」
とマサミはベッドにボスンと寝転ぶ。
「な、なんか曲流すね!」
胸の高鳴りを抑えきれないユウゴは「Sweet William & Jinmenusagi」の『so goo』をかけた。
「あ、あの…な、なんで初対面で、しかもこんな冴えない僕の家に来てくれたんですか」
ユーゴが聞くとマサミは「んーーーー」と背伸びをし、
「なんでだろ? でも私も音楽好きだし、ユウゴくんみたいな誠実な感じの人は好きだよ。それだけでよくない?」
と不思議そうに言った。
「ぼ、僕、セックスとか…したことないんです。女性のことをそういう目でみたこともあんまりないです。でもマサミさん、あなたはすごく魅力的で…その…」
言葉が出てこないユウゴに向かってマサミはベッドの上から手を伸ばした。
ユウゴはその光景に自分を抑えられずマサミに激しいキスをした。
(なんだろう、これ…あ、ああ、このまま…)
ユウゴはそこからのことをほとんど覚えていない――。
【安位カヲル】
エスワン専属女優。Twitter@Kaoru2dive/Instagram@kaoru_yasuiii