セックス体験談|別れのピロートーク#3

「梨香」

 

 意識が部屋の外から、部屋の中に戻る。

 

「めっちゃ気持ち良いよ」

 

 顔の輪郭が崩れるほど大きな口を開けて、梨香はモノを咥えている。

 

「もう…出したい」

 

 たとえその行為が、周りから見たらどれだけ滑稽に見えようとも、「気持ち良い」という事実からは逃れられない。

 

「やばい…もうイく」

 

 むしろ、どれだけ滑稽でもいいから、その事実に飛び込みたい。

 

「やばい…出るっ!」

 

 口からモノを抜こうとしが、梨香の口が強く僕のモノを掴み、離さない。梨香のしゃぶるスピードが早くなる。

 

「やばいやばいやばい! 口に出ちゃうよ」

 

 なぜ精子を出すことが終着点なのだろうか、と一瞬思ったが、そんな答えを出したところで何も変わらない問いは、快楽の前に儚く消える。

 

「やばいやばい」

 

 梨香は止まらない。その姿はどこか「私が出すんだ」という使命感にも似た気迫を感じた。

 

「イ、イくっ…!」

 

 亀頭の先端から、大量の液体が放たれたのがわかった。それと同時に、身体中に広がった炎がすぅーっと小さくなっていく。

 梨香は口からモノを離すと、まるでAV女優がするかのように舌をベーっとした。そこから精子が手のひらにダラっと落ちる。舌先にわずかに残る精子の糸が、カラオケの部屋のライトの光を浴び、キラキラと輝いていた。

 

「口の中に出して大丈夫だった?」

 

 コクリと、梨香は頷く。

 

「そういえばティッシュないなって思ったから。だったら口の中でいいかなって。でも、さすがに飲む勇気なかった」

 

 僕はカバンに手を入れてポケットテイッシュを取り出す。何枚かとって渡すと、梨香は「ありがとう」といつもの笑顔に戻り、精子をティッシュで包んだ。

 

「今まで口の中に出されたことあるの?」

 

 精を抜き取られた僕は頭が働かず、思った素朴な疑問を何も考えずに口にしてしまった。

 

 だが梨香はそんな質問にも明るく答えてくれた。

 

「うん、あるよ。でも、やっぱりなれないね」

「そうなんだ」

「うがーーって感じになるの」

 

 梨香の表情が本当に「うがーー」という表情だったので、僕は笑ってしまう。

 

「なんで笑ってるの!」

「いや、なんか顔が面白くて」

「面白いってなにー!」

 

 梨香は元の明るくて高い声で言った。その明るい声が部屋の中に響き、僕ら二人を包む。薄暗い部屋の中、先ほどまでいやらしいことをしていた匂いを感じさせないほど、部屋の中が明るくなったように感じた。

 

「ありがとうね」

 

 僕は梨香の手を握った。梨香は立ち上がり、僕と手を繋いだまま横に座った。

 

「これで遅刻は許してくれるでしょ?」

 

 少し拗ねたようなそぶりで梨香が言う。でも、その声はやっぱり明るくて、この雰囲気を嫌なものにさせない。

 

「許してないって言ったらどうするー?」

 

 だから、また僕はそれに甘えてしまい、調子に乗って冗談を言ってしまう。

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