電車等における痴漢行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反の痴漢事犯、または強制わいせつ事犯として認知・検挙される。具体的に痴漢とは「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であり、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れる」行為を指している。
最近の痴漢事犯における検挙数は、法務省が発表している平成27年度犯罪白書によると、平成18年が420件に対し、24年が318件、25年が303件、26年が283件で年々減少している。しかし、年間で約300件ということは、3日に2件のペースで誰かが痴漢で捕まっているということだ。これは決して少ないとは言い難い。もちろんこれらはあくまで検挙された数であり、潜在的な痴漢事犯の数はもっともっと多いのだろう。
何がそれほどまでに痴漢行為を誘発するのだろうか。
2010年に警察庁が発表した都内の痴漢摘発路線のランキングによると、1位が中央線、2位が埼京線、3位が山手線、僅差の4位で京王線だった。一般的にも中央線や埼京線は痴漢が多いとは知られていて、同時に激しく混む路線としても知られている。2014年に起き平塚市教育委員会の男性職員が起こした痴漢事犯がそれを象徴していて、「埼京線なら痴漢できると思った」と犯人が語ったほどだ。それだけ埼京線は痴漢に適してしまう路線、つまり混雑が激しい路線であることは間違いない。JRもそれは認識しており、「犯罪抑止効果に加え痴漢犯罪捜査に有効であるため」として車内に防犯カメラを導入した。
実際、中央線や埼京線の混雑具合は想像を絶する。国土交通省によると、それらの路線の乗車率は、ピーク時だと180%を超してしまうらしい。結局のところ、痴漢を誘発する最大の原因は異常な乗車率にあると言っていいだろう。
さてそんな痴漢行為をテーマにし、妄想を最大限まで膨らませ、痴漢には興味あるけど絶対にしない紳士のためのエロゲーがある。アトリエかぐやの『最終痴漢電車』だ。この作品は高いゲーム性と実用性から抜きゲーの傑作として、ブランドの看板タイトルになりシリーズ化した。エロアニメ化もされ、ミルキーズピクチャーズよりリリースされた。
以下があらすじである。
赤字続きの関急電鉄の車掌天野哲雄は、廃線のピンチを阻止する為あるアイデアを思いつく。それは哲雄の天才的な特技痴漢テクニックを駆使し、痴漢願望のある女の子を集め、リアルな風俗としての「痴漢電車」を走らせるというものだった。哲雄は会社には秘密で痴漢電車を走らせることを成功させ、路線は黒字へと転換していく。
このまま上手くいくように思えたが、関急電鉄の外部コンサルタントである羽山玲子や、フリージャーナリストの鳳優香に「痴漢電車」の存在を嗅ぎ付けられる。
ふたりは「痴漢電車」の存在は世間に公表しようと証拠集めを始めるが、哲雄はそれをなんとか阻止しようと奮闘する。
最終的には会社ぐるみで「痴漢電車」を隠蔽することになるが、それとほぼ同時期に廃線の危機が免れることになり、「痴漢電車」の企画も終了させることとになる。
本当の意味で「最終痴漢電車」を発進し、感慨にふけった哲雄の目に驚くべき光景が映った。痴漢電車内に哲雄を慕う幼なじみの西村沙奈が乗車していたのだ。
彼女は痴漢電車の存在を哲雄の同僚から知らされていたのだが、兄のように慕う哲雄が痴漢電車の企画になんて関わっているわけがないと信じていた。それを確かめるため自ら乗車していたのだ。
沙奈に痴漢に飢えた男たちの魔の手が忍び寄る。果たして哲雄は彼女を救うことができるのか――。
エロアニメ版『最終痴漢電車』は3巻構成だ。今作はその名からは意外なほど(?)ストーリーがしっかりと作り込まれていて、90分アニメとして観るのに十分耐えられる。
エロアニメ化されることで原作からのキャラの設定改変がいくつか存在する。大きい変化は鳳優香と羽山玲子だ。原作だと優香は婦人警官だし、玲子は社内の人間だ。
彼女たちは「痴漢電車」に反対であり世間に公表しようとするのだが、哲雄をはじめとした社内の人間に阻止され、また肉体的にも支配されて徐々に「痴漢電車」を容認していく立場になる。この「痴漢電車」という普通に考えたら突拍子もない企画に、明確な反対勢力を用意し、しかし徐々に態度が軟化しいくのが巧妙で面白い。
その他のキャラクターはだいたい原作に沿って登場はするのだが、ほとんどが痴漢対象であり、物語には大きく絡まない。全体的には、幼なじみの西村沙奈が主人公・天野哲雄に憧れているというベースをもとに、哲雄が葛藤しつつも痴漢電車を会社のために推し進めるが、それを阻止する人間たちが現れ、路線は廃線となるのかならないのかに焦点が絞られ、哲雄と沙奈がどういう関係に着地するのか、という流れである。
川原絵美をはじめとした数々のエロシーンは和姦に近い。どういうわけか、ヒロインたちのほとんどがレイプ願望を持っている。「最終痴漢電車」とはいうものの、後半になればなるほどプレイは乱交に近く、タイトルほど犯罪性はない。確実に言えることは、本作も原作も痴漢を推奨したものでは決してない。
リリースが2002年でやや古い作品のせいか、作画や動きがややチープだ。しかしそれが気にならなくなるほど作品として良い。原作ファンでなくとも、エロゲーマーならぜひとも観ておきたい作品だ。
(文=穴リスト猫)
※明確な合意のなく他人の身体に触れるのは犯罪です。
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■『最終痴漢電車 Rail-1』
■『最終痴漢電車 Rail-2』
■『最終痴漢電車 Rail-3』