美咲かんなエッセイ:ふしだらな気持ち「ある日の話」

癒し系美女・美咲かんながAV女優の日常を綴る連載エッセイ:ふしだらな気持ち

美咲かんな

ある日の話

 11月某日、都内某所。私はエッセイの締め切りに追われ、とあるカフェで執筆活動に勤しんでいた。いや、実際は締め切りについて口うるさく言われているわけではないので、追われてはいないのかもしれない。

 本来もっとハイペースで書きたいし書くべきだと思うのだが、編集担当さんも忙しいからそんなにハイペースでも困るだろうとか、パソコンを開くのが面倒くさいとか、どうせ本業じゃないしとか、卑屈なことをうだうだ言い、現実から目を背けている。本当に何をやっても駄目なやつなのだ。作業スペースを自宅に設ければ捗りそうな気もするが、すぐには実現しそうにない。

 そんなモヤモヤした日常の気分転換に、よくカフェを利用する。そのときの気分でロケーションを変え、ノートに文章を書いたり読書をしたりして過ごすことが多いのだが、この日も天気が良く、自然光の入る窓際で考え事をするにはベストだった。

 そのカフェはノマドワーカーが集う…というほど混んではいなかったが、コンセントを利用できる席もあり、作業をしている客もそれなりにいた。コーヒーを飲みながら愛用のペン(三菱鉛筆JETSTREAM多機能ペン0.7ミリ)で30分ほどノートに文章を書きなぐっていると、突然後ろから「すみません」と、声をかけられた。

 ドキッとして振り向くと、そこには洗練された雰囲気のお洒落で可愛らしい女性が立っていた。自分の席にはコンセントがなく、iPadを充電させてほしいという話だったが、私はコンセントを使用しないため快諾した。後々「他の人に頼んでもよかったのでは?」と思ったが、まあ問題はない。

 それから10分くらい経った頃、今度は知らない男の人が話しかけてきた。

 

「すみません。仕事中ですか? あ、勉強中? 綺麗だから、少し話せません?」

 

 え?

 思考が停止した。カフェの店内でこんな不毛な声のかけられ方をすることがあり得たのか。予想外すぎて頭の中が真っ白になる。

 「話なんてするわけねぇだろ!」と心の中で思うけれど、言葉が出ない。男は食い下がってきたが、首を振り続けていたら諦めて去っていった。結局スカウトだったのかナンパだったのかよくわからなかったが、1ミリでも可能性があると思われたかもしれないのは悔しい。

 そもそもカフェの店内で声掛けをするなんてマナー違反ではないか。あちらもコーヒーを飲んでいるならまだしも、見る限り店を利用している様子はなかったので、それも腹立たしい。通り抜けできるような店舗でもない。店内をご利用でない方の出入りはご遠慮ください。お店の人が例えOKだとしても、私はご遠慮願いたい。

 何というか…そんなに話しかけやすい雰囲気だっただろうか。人と話したくないから窓際のコンクリートの壁に向かって独り作業をしているというのに。背中を丸めて文章を書きなぐっているというのに。息抜きに壁の汚れを眺めているというのに。話しかけたい要素がどこにあったのだろう。

 不慣れな出来事に怖くなってしまい、最終的には「いらっしゃいませ」という男性店員の声にまでビビってしまい、ビクッとしたら隣の席の人に変な目で見られてしまった。

 

「違うんです…ローター仕込んで遠隔操作されているわけじゃないんです! 店員さんの声に驚いただけなんです!」

 

 そんな言い訳できるはずもなく、しばらく不審な目でチラチラと見られる羽目になった。

 元々人と接することが得意ではないのだが、この仕事を始めてからはそれが強くなった気がする。新しく人と知り合うのは特に気が重く、仕事のことを説明するのが結構面倒くさい。そっとしておいてもらえればまだいいが、中には冷やかしたいだけの人もいるからだ。

 できるだけ軽々しく絡んでくる人との接触は避けたい。ナンパやスカウトなんてのはもってのほかである。そういう出会いを不毛な出来事と捉えずに人と知り合えるチャンスだと思えるような人間だったら、もっと人生違っていたのだろうか。知り合いが増え、もしかすると恋人なんかもいただろうか…なんて少し考えることもあるけれど、やはり性に合わなさそうだ。

 いや、何を偉そうに語っているのだ。しかも人付き合いができないのを仕事のせいにしてしまうというこの体たらく…恋人どころか異性の友達だってほぼいないじゃないか。すぐスケベな目線で異性を見てしまい(実は同性でもエロい目で見てしまうが)、意識しすぎるところが駄目なのだよ。異性とのかかわりほぼゼロなのに、エロい夢ばかり見ている場合じゃないのだよ。自分に問題があるということに気づきなさい。私。

 よし、明日からは笑顔で、人を受け入れていこう。ナンパだかスカウトだかに腹を立てる暇があったら、エッセイの原稿を少しでも進めますので神様、恋人は要らないのでどうかエロい夢の頻度をもう少しだけ頻繁にしてください!

美咲かんな

【美咲かんな】
生年月日:1994年7月3日
スリーサイズ:T158・B85・W58・H88(cm)
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 突然だが、君たちはセックスについて真剣に考えたことがあるだろうか。私はいつも考えている。秋の夜長の暇潰しに、今日もまた一緒に聞いて想像して、悶々していただきたい。セックスという言葉を知ったのは中学1年生くらいの頃だったと思う。長らくウブだった私はエロについての知識を全くもっておらず、ある日、同級生の男子に「セックスって知ってる?」と茶化すように聞かれた。それが「セックス」との出会いだ。その後同性の友人に何のことか教えてもらおうとしてもはぐらかされてしまい、辞書で調べたが詳細がよくわからないまま放置した。

 桃の季節も終わり、街で見かける広告には芋や栗、秋鮭などが目立つようになってきた。食いしん坊は季節の移り変わりも旬の食材で把握している。一部の食材以外は年中スーパーなどで手に入る時代だが、旬の食べ物は安く手に入る上に美味しさも段違いだ。測る術がないため調べてはいないが、なんと栄養価も違うらしい。仕事や人に合わせるとき以外は、そのとき食べたいと思ったものを我慢せず食べるのが私の生き方であり、生き甲斐だ。

本棚が欲しい。そう思い始めてから既に1年近く経っている。数年前までは扉付きの棚に収納していたのだが、あまり大きい棚ではなかったのであっという間に満杯になり、結局段ボールや蓋つきの箱に入れることが多くなってしまった。それからずっと本棚は構えていない。

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