医食同源。食こそ生命の源なり――。ということで、精力みなぎるグルメをご紹介いたします。近頃何だか元気ないんだよな~なんて漏らしている貴方、お試しあれ!
海の宝石がぎゅっしり詰まった大きなフライ
秋というのは切なくて物悲しく、そして1年でもっとも変化のめまぐるしい季節である。9月の残暑から始まり、お彼岸を過ぎるととたんに風が冷たくなり、10月に入る頃には熱燗が恋しくなる…。
秋はまた、食欲の季節でもあり、1年かけて育てたものを、収穫して食う季節。勃活グルメもまた、収穫の時期が来ている。
「精のつく食材」でググると、トップヒットするのが「カキ」だ。マガキはまさに、収穫の時季。秋は、穫って食って勃起する季節なのだ。
日本橋某所に、とっておきのカキ料理が食べられる料理屋がある。といっても、カキの時季以外はとんかつの名店でもあるが、その店が今年も10月1日から名物のカキ料理を開始した。
人形町の裏路地には様々な飲食店が並んでいて、散歩してもそうそう飽きないくらい。親子丼の名店から、名前こそ知られていないが、気軽に入れそうなビストロまで。そんな路地裏にその店はある。
例年なら、11時の開店の30分前には長蛇の列ができているその店も、今年はこの程度。ご時世なので、嬉しいのか嬉しくないのか複雑な心境だが、店を目の前にして確実にハラはへり、「キュルキュル」と今にもヘタクソな独奏を奏でそうな勢いだ。
ハラのラッパ吹きをなだめつつ並んでいると、女性店員さんが注文を取りに来る。前から一人づつ、「2コで、普通盛り」、「3コで大盛り…」などと言っているのは、メイン料理の数とご飯の量。料理を数でしか注文しないのは、この時季、この店のランチメニューはひとつだけ。数はその個数ということだ。
待つこと15分、いよいよ順番が来て店に入り、カウンター席に通される。隣の席とは半透明のプラ板で仕切られているのはやはりご時世。注文はさっきしたので、あとは待つばかりなのだが、この黄色いフダはいったい…?
数によって色が違うのかと思ったが、前のおばちゃんの注文は確か2つでオレは3つ。なのにフダはどちらも黄色…。共通点はご飯の量か?
おっと、そんなことどうでもいい。早く、はやく、食わせろオレの昼メシ。
左隣から順々に定食の乗ったおぼんが運ばれてくる。チラ見えしたおばちゃんの皿に乗っていたのは、確かに2つだった。
「お待ちどう様でした~」
待ったよ、待ったよ、待ちましたよ、朝メシ抜いて来たんだ。カウンターの向こう側から出て来たおぼんを受け取り、自分の目の前に置くとそこには、注文どおり、3つのあいつが。
コレココレ。女性のにぎりこぶしくらいありそうな大きな俵型のフライは、メンチカツでもカニクリームコロッケでもない。実りの秋と同じ黄金色に揚がったやつ、それは、カキフライだ!
「なんだ、ただのカキフライ…?」
そのとおりカキフライだ。しかしなぜ、みな並んででも食べたいのか? それは、これが「ただのカキフライ」じゃないからだ。
ただのカキフライは、衣をたっぷり纏わせた揚げ底ものでも、大きさはせいぜいこの半分くらい。でも、イワガキならまだしも、マガキでこの大きさって…?
この大きなカキフライの秘密、それは、5、6粒のマガキをまとめて揚げているのだ!
なんとコペルニクス的発想! そのひとつを箸で割ってみると…。
カキがぎゅっしり寄せ集まり、衣で密閉され、隣り合わせに並んでいる…。完全に三密だが、美味しいものは、三密の方がダンゼンうれしい。
半分にしてちょうど良い大きさ。いや、それでもちと大きいか。箸でつまみ、最初の一口なのに、無理やり押し込んだ。
ウホホ、あっつあつ!
ハホハホしながら歯を立てると、サクッとした衣の食感のあと、トロトロのカキの塊が崩壊して舌の上になだれ落ちてくる。さらに、海の香りが口いっぱいに広がった瞬間、一気に鼻から抜けて行く。
抜けていかないのは、カキの芳醇でメタリックな味。「う~ん、金属系食べてるな~」という、満足感に似た明日朝の朝勃ちの予感でニヤリ。
ふたくち目は余裕を持って、今度はからしをつけて。2つ目には添えてあるレモンを絞り、ふたつには割らず、そのまま箸でつまんで持ち上げた。
「でかくて重い」
その重い中身は普通の5、6倍のカキなのだ。
メインのカキばかりに気を取られ、つい、ご飯や副菜が後回しになってしまうほど。それほどこのカキフライには魅了さてしまう。
主菜が美味ければ、副菜がまずかろうはずはない。芳醇が詰まったカキフライを頬張ったあとは、千切りキャベツにソースをひと垂らし。さらに白メシと豚汁で口の中は、今までの興奮など何もなかったようにリセットされる。
そこに4度、黄金色の大きなやつを頬張ると、濃厚でジューシーなカキが押し寄せてくる。
たまらんたまらん、3つにして正解。もう1個残っている。これは再びからしをつけて思い切りかぶりついた。大正解だ。
うまいカキフライのおかげで、やっぱり白メシが最後に残ってしまったが、それも、舌と記憶に残ったカキの風味で一気に平らげた。大正解にして大満足。そして明日が楽しみじゃ…(笑)。
【カキフライの主要勃活成分】
・カキ
精子の生産うながす亜鉛を筆頭に、エネルギー源となるグリコーゲンや、鉄や銅などの必須ミネラルが多い。また、疲労回復やスタミナ増強に効くタウリンも豊富。亜鉛はビタミンCと一緒に摂取すると吸収が高まるので、レモン汁をかけて食べるとさらに勃活効果あり。