セックス体験談|セフレと恋人の境目<第4夜>

隔たりセックスコラム「セフレと恋人の境目<第4夜>」

隔たり…「メンズサイゾーエロ体験談」の人気投稿者。マッチングアプリ等を利用した本気の恋愛体験を通して、男と女の性と愛について深くえぐりながら自らも傷ついていく姿をさらけ出す。現在、メンズサイゾーにセックスコラムを寄稿中。ペンネーム「隔たり」は敬愛するMr.Childrenのナンバーより。

 

※イメージ画像:Getty Imagesより

『セフレと恋人の境目 〜第1夜〜』
『セフレと恋人の境目 〜第2夜〜』
『セフレと恋人の境目 〜第3夜〜』

 下半身の違和感で目が覚めた。

 目をこすり、顎を引くようにして顔だけ上げると、裸の七海がベッドに腰掛けていた。

 七海の手は布団の中に潜り込んでいる。


「あ、起きちゃった?」


 カーテンの隙間から差し込んだ光が七海の体を後ろから照らす。その光のせいで、七海の裸が神々しく見えた。

 朝に見る裸は、夜の裸に比べると、全くエロさを感じない。


「七海、何してるの?」


 夜に見る裸は、日中に服を着ていたという前振りが必ず存在する。隠されたものが解放されるというドキドキ要素が加わって夜の裸はエロく感じるのだと、僕は思う。初めからむき出しになっているものに、エロさはあまり感じない。

 前日にセックスをした流れで存在している朝の裸。エロさは感じないが、朝の裸にはまた違った感覚を与えさせられる。僕は七海のむき出しになった胸をみて、無性に触りたいという衝動に駆られた。

 この衝動は性欲によって生まれたものではない。純粋なる好奇心だ。


「あ、ごめんなさい」


 七海は布団の中から手を引っこ抜く。


「いや、そういうことじゃなくて。触りたいなら触ってて良いよ」


 朝に女性の胸を触りたいと思うのは、純粋なる好奇心だ。僕の胸には、女性のような豊かな膨らみは付いていない。自分が持っていないからこそ、その不思議な存在に心を奪われ、触りたくなってしまうのだろう。

 そして同じように、女性の股間には棒が付いていない。自分の股間についていないものが、男についているのなら、興味を持つのは当たり前だ。つまり、七海が朝っぱらからモノを触るという行為は、なんら不思議なことではない。


「あ、うん。触りたいというか、不思議だなって思って」


 その棒が、朝から大きくなっていたらなおさらだ。


「寝ているのに硬くなってるから」


 七海は大きくなったモノを触りながら、目を細めて笑った。七海もまだ眠そうだった。

 

「不思議だよね。朝勃ちって結構あるんだよ」

「そうなんだ。それは、エロい夢を見ているってこと?」

「うーん。エロい夢を見ていなくても、勃つときはある」

「え、じゃあ興奮しなくても勃つってこと?」

「そうなるかもしれない。多分、リラックスしてるから勃つっていうのもあると思うんだ」

「リラックス?」

「ほら、緊張してると勃ちづらくなるとか聞いたことない? あれの逆」

「なあんだ。無意識にそういう気分になってるのかと思った」


 七海はモノを持つ手を優しく上下に動かす。素直な七海は、僕の体の反応に対しても素直に受け取ってくれる。


「今はちゃんと、そういう気分になってるよ」


 僕がそう言うと、七海がこちらを向いて「えーどうしよっかなあ」とニヤニヤした。

 僕は寝起きで重たくなった体を起き上がらせ、「七海が舐めないなら俺が舐めるよ」と、七海の胸を口に含んだ。朝の胸はエロくないけれど、なんだか優しくて、陽だまりのような暖かみがある。


「なんか、赤ちゃんみたい」


 胸をしゃぶる僕を見て、七海はそう笑った。七海は結婚したら良い母親になりそうだな、と僕は理由なく思った。


「じゃあ、赤ちゃんがしないことをするね」


 僕は七海の股間に手をやる。割れ目に指を沿わせると、ほんの少しだけ濡れていた。


「何もしてないけど、ちょっと濡れてるね」

「本当?」

「うん」

「女性の朝勃ちってやつなのかなあ?」


 アソコの割れ目を撫でていると、少しづつではあるが、愛液が広がっていった。七海は体を縮こませるようにして感じ始める。同時に胸を舐めると、七海は「あん」と卑猥な声を漏らした。


「感じちゃってるね」

「もう」


 七海は僕の体をベッドに倒し、モノをしゃぶり始めた。昨日はそのまま寝てしまったので、身体中にセックスの名残がある。モノは七海の膣内に入った後、洗っていない。一体どんな味がするのだろう。そんな冷静な気持ちで、七海のしゃぶる姿を眺めた。朝勃ちで大きくなっていたモノは、あっという間にパンパンに膨らんだ。


「七海、フェラは好き?」

「うん、好き」


 七海はモノを口に咥えながら答えた。


「朝からフェラ出来るって、嬉しい?」

「うーん。フェラは好きだけど、そう聞かれると難しいな」


 昨日の夜は「交尾」という言葉が相応しいような、互いの性欲をぶつけ合った激しいセックスだった。対して今は、性欲というよりも好奇心から始まっている。好奇心は好き嫌いから離れたものだから、難しいと答えたのだろう。


「じゃあ、朝からセックスできるのは嬉しい?」

「えー何その質問!」


 七海はモノから口を離して、上目遣いで僕を見た。


「それは隔たりが嬉しいんじゃないの?」

「そうかもしれないね」


 僕は七海の頭を撫でながら言った。

「僕は嬉しいって思う、と思うよ」

「思うと思う?」

「うん。今は激しく燃え上がるような『セックスするぞー!』という性欲はないけれど、それでももし朝からセックスができるとしたら、終わった後には”嬉しい”と感じることは予想ができる」


 七海は僕の声に耳を傾けている。


「どんなときだって、セックスできるのは嬉しいことなんだと思う。誰かと体を重ねるなんて、なかなかできないことだから。そんな貴重なことをできるというのなら、朝も夜も、ましてや性欲すら関係ないって思ってしまうんだ」


 七海のモノをしごく手が止まった。


「それは、セックスできれば誰でも良いってこと?」

「誰でも良いっていうのとは違うんだ。なんて言えば良いんだろう…なんか”感謝”って言葉に近いかな」

「感謝?」

「僕とセックスしてくださってありがとうございます、っていう感謝。感謝には、朝も夜も性欲も関係ないかな」


 七海が軽く首を傾ける。

 

「…って、ちょっとわかりづらいよね」

「うーん。なんか全部汲み取れたかはわからないんだけど」


 七海は再びモノをしごき始めた。


「まあ要するに、嬉しいってことで良いのかな?」


 七海は首を傾けながら目を細めて笑った。


「そうだね。要するに今、七海とセックスがしたいってことだよね」


 やっぱりそれなんだね、と七海は再び笑う。そしてモノに一度だけ口づけをした。


「そしたら、する?」

「ん、仕事の時間は大丈夫?」

「今日は昨日より遅めのシフトだから」

「そうなんだ」

「隔たりは? 仕事大丈夫?」

「…そんなに早い出勤じゃないから大丈夫」

「そっか」

「うん。七海がいいなら、セックスしたい」


 いいよ、と七海は僕の上に跨った。ちょっと待って、と僕は手を伸ばしてカバンの中からゴムを取り出す。急いでモノにつけると、その上に七海の体がゆっくり落ちた。

 揺れる胸。優しい喘ぎ声。朝を知らせるために小鳥が鳴くように、七海が僕の上で踊りながら可愛く鳴く。

 そして正常の体勢に移行して、深いキスを交わし、そのまま中で果てたのだった。

 セックスをすると、相手のことを全て理解したような感覚になる。本来は一番相手に見せることのない「裸」をさらけ出し合ったり、性器を交じり合わせていることによって、本当は何も分かっていないのに相手の深い部分を知ったような気になってしまう。それは裸以上に相手に隠すことはないという思考が、無意識に頭の中に生まれてしまうからだ。

 けれど、七海の全てを知っているのかと問われてしまったとしたら、僕は何も答えられないだろう。知っているのは、マッチングアプリに書いてあった情報と、実際に会った時の雰囲気だけだ。セックスしているのに、同じ布団で一緒に寝ているのに、僕は七海のことを何も知らない。

 それは七海も一緒だ。

 僕がどこに住んでいて、どこ出身で、何が好きで、どんな人生を歩んできたか、七海は一切知らない。僕が話していないというのもあるが、七海は僕が働いていると思っている。僕はニートなのに。

 相手のことを深く知らなくても、セックスは出来てしまう。その人とのセックスを知ると、一番深い部分に触れたような気分になる。

 しかし、それは偽りの感覚なのだ。本当に相手と深い関係になるには言葉が必要で、その言葉を何度も交わさなければならない。その会話の積み重ねによって相手への理解は深まると、僕は思う。

 そして、言葉を交わすのを積み重ね、その上でセックスをするからこそ、その人に対する「愛情」は生まれるのだ。

 だから、セックスで始まった僕らの関係に「愛情」を生むには、もっと言葉を交わさなければならない。

 七海と出会って2日が経った。僕は七海と付き合いたいのか、それともセフレという関係でいたいのか悩んでいる。どちらになっても、長期的な関係を築きたいという想いがあるのは確かだ。

 本来はそれをちゃんと七海に話した方がいい。七海ともっと言葉を交わした方がいい。お互いをさらけ出しあって、深い話をした方がいい。

 分かっている。分かっているのだけど。

 僕はいつも楽な方へと逃げてしまう。セックスで始まり繋がった関係は、セックスで語り合う方が楽だから。

 セックスを終えるとそれぞれにシャワーを浴び、服に着替えた。少しだけ朝のニュースを見た後、「仕事嫌だな」という七海のつぶやきを合図にするようにして、僕らは一緒に家を出た。

 エレベーターは相変わらず来るのが遅い。


「そしたら今日も俺、階段から降りて帰るね」

「うん、分かった」

「それじゃあ」


 最小限の言葉でやり取りをし、僕は階段の方へ歩いていく。


ガチャッ


 すると突然、フロアの一番奥の部屋、つまり階段に一番近い部屋の扉が開き、中から女性が出てきた。

 漆黒のようなロングの黒髪が印象的な女性は、スタイルがわかるような薄めの長袖にスキニージーンズという格好をしていた。瞬間的に、雰囲気のある女性だなと思った。

 階段へと向かいながら、吸いつけられるように女性を見ていると、扉を閉めようとした女性と目が合った。


「え!?」


 女性の驚いたようなリアクションで、急に我にかえる。やばい。僕は小走りで女性の横を通り過ぎ、勢いよく階段の扉を開けた。


「ん、あれ?」


 女性の戸惑っている声を背中で受けながら、僕は階段を走って降りた。扉が「バン!」と大きな音を立てて閉まる。その音に驚き、心臓が飛び出そうになった。そういえば、七海の住む階は女性しか住んでいない。


「いきなり会っちゃうのかよ…」


 階段の目の前の部屋に住んでいる女性。ということは、あの女性は七海の友人だ。


「きれいな感じだったな。あれが七海の友達か…」


 階段を下りきって外に出ると、会社へ向かう七海の後ろ姿が見えた。七海の勤めている会社はマンションから徒歩10分程度のところにあるらしく、駅と反対方向にある。隣には、先ほど僕がすれ違った女性がいた。

 やはりあの女性は七海の友達だった。七海はあのすれ違う瞬間を見ていたのだろうか。友達は、僕のことを七海に聞いているのだろうか。

 七海との関係がバレてしまったんじゃないかという不安と、七海ともっと仲良くなれば、あのきれいな友達とも仲良くできるのではないかという邪心が同時に生まれる。

 2人の姿が消えるのを眺めてから、僕は駅へと向かった。そういえば、今日は家に行くかどうかを話合わなかったなと、僕はこの時になってやっと気づいたのだった。

 お昼頃、僕は同居人と暮らしている家にいた。同居人は働いているから、日中は家にはいない。久しぶりの部屋でゴロゴロしていると、七海からラインがあった。


「昨日は来てくれてありがとう。一緒にいれて本当に楽しかった。作ってくれた親子丼も美味しいってたくさん食べてくれてありがとうね。すごく嬉しかった」


 僕は暇なので、すぐに既読をつけた。七海は仕事の休憩時間なのだろう。返信を考えていると、再びラインがきた。


「本当はね、そういうことするなんて思っていなかったし、こういう関係は初めてで、だからどうすればいいいかわからないというか、このままサヨナラするのはすごく寂しいって思っちゃったの」


 こういう関係。その文字に思わず目が止まる。僕が悩んでいて口にできなかった、僕らの関係性。七海はそれを「こういう関係」と表現した。

 こういう関係ってどういうものだろう、と考える。その前に書いてある「そういうこと」とはセックスのことであるから、七海の書いた「こういう関係」とは、セフレのことを指しているのだろう。

 七海とのこれまでの日々を振り返る。初めて出会った夜にセックスして、翌朝にフェラをしてもらい、その日の夜に再び泊まってセックスをし、翌朝にまたセックスをした。出会って3日で計3回のセックス。つまり僕らは付き合っていないのに、会ったら必ずセックスをしている。

 確かにこの2日間、僕らはセフレのような日々を過ごした。

 僕が既読をつけたまま返信できずにいると、再び七海からラインが送られてきた。


「だからまた家に来て欲しいと思ってるし、隔たりが大丈夫な時に来て欲しい。ほんといきなりこんなライン送られて迷惑だよね。でも、このままバイバイは悲しくなっちゃったから、ごめんなさい」


 また家に来て欲しい。七海は僕らの関係を「セフレ」と捉えた上で、それでもまた僕に会いたいと言ってくれた。

 僕は当たり前のようにまた七海と会うつもりでいたが、七海は僕にもう会えなくなってしまうと考えて不安になってしまったのだろうか。確かにセフレという関係を考えれば、七海の不安にも納得がいく。

 七海は僕らの関係をはっきりさせるよりも、僕に会うことを望んでいるのだ。曖昧な関係でもいいから、僕に会うことを。セフレでもいいから、僕がまた家に来ることを。はっきりさせてしまったら、会えなくなってしまうかもしれないから。

 僕自身、七海とどういう関係になりたいか決めきれていない。しかし七海は、どんな関係でもいいから「会いたい」と言ってくれている。

 僕も七海に会いたい。その気持ちは確かだ。


「俺も2日間一緒に入れて楽しかった。これでサヨウナラはしたくない。七海に会いたいと思ってる」


 悩んでいる気持ちは、七海のように素直に伝えられない。今の僕の中には付き合いたいという気持ちが曖昧に存在しているだけで、関係をはっきりさせるための覚悟は決まっていない。

 しかし、そんな状況の中でもお互いに一致している気持ちがある。もはや関係なんてどうでもいいことなのかもしれない。心の中にある「会いたい」という気持ちだけ、大事にすればいいのかもしれない。セフレとか、恋人とか、関係なしに。


「だから、今日も行っていい?」


 すると、七海からすぐに返信がきた。

 

「ほんと? よかった。私も会いたい。今日も大丈夫だよ」


 今日も七海に会える。おそらく、今日もセックスをする。

「そしたら今日は俺がご飯作ろうと思うんだけど、どうかな?」


 僕はセフレに料理は作らない。なぜなら、セフレとは「セックスするだけの関係」と認識しているからだ。料理を作ることは、僕のセフレの定義から反している。

 理由は口に出せないけど、これが今できる精一杯の愛情表現だった。


「え、本当に? いいの?」


 七海に会うこと、料理を作ることは簡単にできる。

 しかし、僕が七海をどう思っているのか、これからどういう関係になりたいのかは、全く言えない。七海のようなぼんやりとした言い回しでも、悩みを素直に打ち明けることは、なぜだかできなかった。

 七海の家で何を作ろうか。そう言えば、友達は七海に何か言ったのだろうか。あの可愛い友達と僕は友達になれるのだろうか。

 そんなどうでもいいことばかりを考えてしまう。本当に大切な想いや悩みは、片隅に置いて。

 

 七海の家で僕は野菜炒めを作った。得意料理とか、自信があるからというわけではなく、単純に二日連続で野菜を取っていなかったという理由で作った。


「美味しい!」


 七海は僕が作った野菜炒めを喜んで食べてくれた。野菜炒めなんて誰でも作れるよ、と言ったときに「誰かが私のために作ってくれることが嬉しいんだよ」と七海は言った。

 誰かが、私のために。

 七海のために僕は今日来たんだよ、と言ったら喜んでもらえるのだろうか。それとも、それはまた違った「セックスしたいから来たんだよ」というニュアンスで伝わってしまうのだろうか。

 そのまま僕らは食事を終え、テレビをつけた。面白い番組がやっておらず、それ以外は特にすることもなかったので、いつものようにシャワーを浴びてベッドに入った。いつもとひとつだけ違うことがあるとすれば、七海の入浴時間が早かったことだ。


「今日、入浴時間短くなかった?」


 ベッドに寝転がりながら、僕の腕を抱きしめている七海に聞いた。


「あ、うん、気づいた?」

「気づくそりゃ。待つ側だしね。なんで早かったの?」

「うーんと…」

「あ、言いづらかったら大丈夫だよ。なんとなく気になっただけだから」

「いや、大丈夫。えっと、そもそも入浴時間が長かったのは元カレの影響」

「元カレの影響?」


 元カレと入浴時間にどんな繋がりがあるのか、全く想像できなかった。

「元カレがちょっと潔癖?なところがあって、その…エッチするときにすごく気にするから」

「うん」

「だからエッチする前に、ちゃんと体を洗わなきゃいけなかったの。最初の頃、普段入浴している感じで出たら、『ちゃんと体洗ったの? 短くない? もう1回洗って来て』って言われて…。それ以来、エッチの前は入浴が長くなったの。長い時間入っていれば、何も言われないから」

「ちょっと大変だね」

「うん。だからラブホに行くときはいつもフリータイムだったの…ってこれはどうでもいいか。とにかくエッチの前は長く入るのが癖になっちゃって」


 話を聞きながら、僕は七海と初めて会った日の夜を思い出していた。確かあの日も、七海の入浴時間は長かった。あの時、僕が泊まることは決まっていたが、セックスしようという話はしていない。

 ということは、あの日の夜、七海は僕とセックスするつもりでお風呂に入ったということになる。

 そういえば、七海は風呂に入る前、「今日はベッドに寝ていいよ」と僕に言った。その時は、僕の寝る場所を気にしてくれたという優しさかなと思ったが、やはりあの言葉は、七海の「セックスをする」という決意だったのだ。

 

「そっか。そしたら今日はなんで早かったの?」


 セックスをする前は入浴時間が長くなる。ということは、今日は短かったから、セックスをするつもりはないということなのだろうか。

 今、僕らは二人とも裸なのに?


「もしかして、隔たりも元カレと同じ? ちゃんと体洗ってないんじゃないかって思ってる?」


 横を向くと、七海は少し不安で泣きそうな顔をしていた。


「いや、俺はぜんぜん気にしないよ。単純になんで今日は早いのかなって」


 僕は七海の不安が消えるようにと、微笑んだ。


「時間がもったいないって思って」

「ん?」


 七海は僕の腕に顔を埋めた。


「…恥ずかしい」


 柔らかい胸が腕に当たる。胸は何度当たっても嬉しい。


「なんで恥ずかしいの?」


 七海がなんで恥ずかしがっているのか、僕にはわかっていた。だが、それは七海の口から聞きたい。


「…たくさん、そういうことができたらいいなって」

「そういうこと?」


 僕は意地悪に微笑む。七海は今にも火が出そうなほど顔を赤くして、そしてこっそりと秘密を打ち明けるかのように小声で答えた。


「たくさんエッチできたらいいなって」


 七海がそう言ったときに、僕はキスをした。七海はすぐに舌を入れてきて、激しく絡ませる。

 そのまま僕らは互いの体を貪りあった。


「そしたら今日は俺が舐めるね」


 僕は七海の下半身に移動し、足を開かせた。真っ白な肌をした七海の体に似合わない、赤黒とした性器が顔を出している。割れ目に指をそっと這わせると、笑ってしまうほどそこは濡れていた。


「七海って濡れやすい?」

「そうかもしれない…」


 僕との触れ合いで濡れたのか、ただ体質で濡れたのかは詳しくはわからない。けれど、濡れてもらえるということはとても嬉しい。濡れていると、七海の体がセックスを望んでくれているのかと思えて、そのことが余計に僕を興奮させる。濡れていれば理由なんて何だっていいのだ。濡れているという事実があればいい。


「それじゃあ、舐めるね」


 舌先でアソコの周りを円を描くようになぞる。ゆっくりと中心へ向かっていき、割れ目の中に舌を差し込んだ。少ししょっぱい。けれど、それがエロい。


「美味しいよ」


 無意識にそう口に出た。美味しい、美味しい、と言いながら僕は七海のアソコを舐める。少ししょっぱいし、ご飯の美味しさとはかけ離れているのに、「美味しい」と口に出てしまう。

 もしかしたら「美味しい」という言葉は、純粋に味を評価した言葉ではないのかもしれない。人は味に対する評価ではなく、この対象を長く味わっていたいと思ったときに「美味しい」と言うのかもしれない。

 もっと食べたいから、もっと舐めたいから、美味しい。


「七海のアソコ、美味しいよ」

「恥ずかしい…あんっ」


 舌先で優しくクリトリスに触れると、分かりやすいくらいに七海が体を震わせ、声を上げた。ただ快感を得るためだけに女性の身体に存在しているクリトリス。その存在が愛おしくて、もっと舐めたくなる。


「あっ、んん…あん」


 七海の喘ぎ声の音色が変わる。少女に若返ったような可愛らしい声に、興奮が刺激される。その可愛らしい喘ぎ声を聞きながら、一定のペースでクリトリスを舐め続けていると、七海の太ももが震え出した。


「あっ、イっ、イクっ!!!」


 力が入って一瞬浮かび上がった体は、イった瞬間に力が抜け、ベッドに落ちた。女性が感じるセックスの喜びにイクことは関係がないと言うが、イってもらえるというのはやはり嬉しい。


「いつも気持ちよくしてくれたから、お返しね」

「…舐めたい」


 舐めたい、と言いながらも七海はすぐに動けなさそうだったので、僕が移動し、寝転がっている七海の顔の前にモノを置いた。七海はすぐさまモノを咥えて、激しくしゃぶり始める。


「おいふぃ。おいふぃ。んあっ、美味しい」


 さっきの僕を真似るように、七海は「美味しい」と言いながらモノをしゃぶった。モノが美味しい味がするわけないと思いながらも、興奮は増していく。モノは破裂しそうなほど、パンパンに膨らんでいた。


「熱い…。美味しい…」


 フェラをされながら「美味しい」と言われるのはとても嬉しい。もしかしたら僕は、「美味しい」と言って欲しかったから、クンニをするときに「美味しい」と言ったのかもしれない。

 自分がされて嬉しいことを相手にしましょう。相手のことを想うようなその考えには、「自分はこれをされたら嬉しい」という欲求が潜んでいる。人は自分の欲しい愛情の形を、気づいて欲しいと言う願いを込めて相手に向けるのだ。

 となると、七海は僕にどんな愛情の形を向けているのだろうか。考えてみたけど、気持ちよすぎて頭が回らない。


「やばい、イキそう。挿れたい」


 七海が僕に具体的に何を求めているかはわからない。けれど、セックスは望んでくれているはずだ。そう信じたい。


「うん。挿れて欲しい」


 僕はゴムをつけて、七海の股の間に移動する。

 七海は僕とのセックスを望んでいる。そう願わずにはいられない。


「そしたら、挿れるね」


 僕との関係を「こういう関係」と表現した七海。そんな七海は最終的に、僕とどんな関係になるのを望んでいるのだろうか。


「あ…入っていくの好きぃ…」


 愛液が溢れたアソコに、パンパンになったモノが侵入していく。


「そこ! 気持ちいい!」


 美味しいと言い合っていたからだろうか、今日の七海はやけに気持ち良いことを素直に口に出す。セックスを楽しんでいるようなその反応は、僕の心を刺激した。気持ちが高揚していき、無意識に腰の動きが早くなる。

 

「そこ! そこ! 好き!」


 今日も隣の住人はいないのだろうか。それはわからない。


「もっと! もっと! もっと!」


 自分の感情を素直に表現すること。


「あっ、あっ、あっ、キスしてぇ!」


 自分の望みを素直に相手に伝えること。


「好き! 好き! 好き!」


 セックスのことなら。


「やばい、イキそう…」

「ダメ! もっとしてたい!」


 セックスのことなら、伝えることができるのに。


「俺も、もっとしたいっ」

「私も! もっとしたい!」


 それ以外のことは。


「あ、ダメだ、イク!」

「いや、もっと、もっとぉ!」


 本当にお互いが考えていることは。


「ごめん、イクよ!」

「ああああああああアアァァァァああああ!!!」


 伝え合うことはできない。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「七海、大丈夫?」

「うん…大丈夫」

「…めっちゃやばかった」

「…そうだね、私もやばかった」


 モノを抜いて、七海の横に寝転がる。ちょっと落ち着こうかと言うと、七海は僕の顔を引き寄せキスをした。呼吸が荒れたまま、舌は激しく絡み合う。そして、呼吸が落ち着くとともに、舌の動きも穏やかになった。


「激しかったね」

「うん、激しかった」

「七海は激しいの好き?」

「嫌いじゃないかも」


 セックスのことなら、何も包み隠さず話すことができる。

 

「やっぱり今日もフェラ気持ちよかったよ」

「本当?」

「うん。ただ激しいだけじゃなかった」

「嬉しい。勉強したかいがあった」

「あ、やっぱり勉強したんだ」

「うん。元カレがさ、フェラにこだわりがある人で」


 セックスの話題なら、昔の恋人とのエピソードだって話せる。


「フェラをしないと、私のことを触ってくれないの。だから、色々勉強した」


 七海は少し体を横に向かせ、モノを触りながら話し始める。


「元カレにも指導されてさ。最初は嫌だったんだけど」


 七海は子供をあやすように、慣れた手つきでモノをしごく。


「勉強したのを彼にやるとさ、反応が良くなったのが目に見えてわかったんだよね」


 舐めるだけでなく、七海はモノを扱う手つきもいやらしい。


「それが嬉しくて。気づいたらフェラをするのが好きになった」


 まあ元カレにしかしたことなかったんだけどね、と七海が笑う。


「やっぱり、元カレにするのと、俺にするのとはちょっと違った?」

「そうだね。形も違うし、大きさも、硬さも違うなって思った。だから、楽しいというか…」


 七海と目が合う。同じことを考えているというのが、その目を見てわかった。

 セックスのことならばもはや、言葉を交わさなくても通じ合うことができる。


「うん、舐めていいよ。…いや、舐めて欲しい」


 やった、と七海は笑い、僕の足の間に移動してフェラを始める。先ほどとは違う、まったりとした、モノを堪能するようなフェラだった。

 このフェラを一生味わっていたいと思う。七海とこれからもずっと、セックスをしたいと思う。


恋人かセフレかー。


 セックスできればどちらでもいいと、七海にフェラをされながら、僕はそう思った。七海が楽な関係がいいならば、そのままでいい。セックスし続けるには恋人にならなけらばならないというのなら、それを選択するだけだ。

 七海のしゃぶるスピードがだんだんと早くなっていく。吐息を漏らしながら、七海はしゃぶり始める。

 もう1度セックスをしたい。そう思った時に、七海と目があった。

 七海は僕の思いを見透かしたように笑い、モノを持って僕の上に跨った。

 セックスのことなら、言葉を交わさなくたって通じ合える。

 モノが七海の中へと入っていく。

 僕のモノと、七海のアソコ。

 隙間なく密着した互いの性器の間に、隔たりはない。

※続きはコチラ↓

 生で挿入した時の気持ち良さは、いつだって想像を超えていく。たった0.03ミリの薄い膜があるかないかだけの違い。挿入の快楽において、その0.03ミリという差は圧倒的に大きい。

(文=隔たり)

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