【緊急インタビュー連載】アフターコロナ:アダルト業界の未来#1 AVプロデューサー・淫語魔編

――AV業界は不況ですが、仮定の話で、もう少しAVが売れていれば一斉に撮影を止めることもできましたか?

淫語魔:そうですね。14、5年前のように儲かっていれば、撮影を止めても大丈夫なところはあったでしょう。でも、いまは自転車操業のところが結構あるので、撮影をストップさせるのはなかなか大変だと思います。

――そうなると一概に撮影を続行させていることも責められないですか?

淫語魔:社会的にも、倫理的にも誰にもうつさないようにするというのは大前提です。そうなると撮影を止めた方がいいとは思いますが、本当に借金まみれで身動きが取れなくなっているような人には「止めろよ」と言ったところで、こちらは何の強制力もないですから。

――現実的に撮影をしているメーカーもあるんですか?

淫語魔:どれくらいか分からないけど、やっているところはあると聞きます。例えば男優さんやAVプロダクションからも撮影があるって聞こえてくるんです。

――その人たちは新型コロナが怖くないのか? それともギャランティが入るから喜んでいるのか?

淫語魔:それは人それぞれです。危機意識がないなあっていう人もいるでしょうし。

――そうなると業界をまとめる協会がないのは残念ですね。

淫語魔:そこは「IPPA(著作権保護等の活動を主な目的とする日本の特定非営利活動法人)」や、それこそ「AV人権倫理機構」あたりが言えばいいと思うんです。「AVとしてはこういう形を考えています」みたいな宣言が出ていれば、ガイドラインに沿ってメーカーも従うと思うんです。

――確かに大きな団体が統一見解を出せばいいんですよね。淫語魔さん自身は家にいてどういう仕事をされています?

淫語魔:パッケージのテキストとかを書いています。あとは台本書き、ライター仕事とほぼAVを見て文字を書く毎日です。

――収入はどうですか?

淫語魔:仕事自体はないわけではないですが、かなり下がりました。フリーは保証されていないなって思います。

――収入減の対策はしていますか?

淫語魔:プロデューサー業はデスクワークもあるのでそれをしつつ、いまはしのぐしかないです。自分の場合はライター仕事もあるので、そっちの比重を増やそうかなと思っています。

――他のプロデューサーや監督も同じような感じですか?

淫語魔:フリーの人はそうだと思います。撮影がないってことは収入がないってことです。いちばん困っているのは監督とフリーの技術スタッフです。カメラ、音声、メイク、女優さんも暇そうです。でも、いいことだと思っていることがひとつあって、女優さんが自分たちでネット配信しているじゃないですか。あれはいいことです。

 女優さん自らが他の誰の力も借りないで発信する技術を身につけるのは今後、AV女優としての価値を高めると思います。いまの時代は自分の力だけで動ける女優じゃないとなかなか生き残れないです。特に個人でメディアを扱えるのは武器になります。

――あとAVショップもキツそうですか?

淫語魔:以前は全国に3,000店舗くらいあったんですが、いまは800店舗を切ったとか。この5年で一気に減りました。

――今回の新型コロナ禍で外出自粛要請が出ているため、もっと減る可能性はありますか?

淫語魔:何もしなければありえます。正直、メーカーは配信があるのでまだ売る場所があって、何とか回っていくと思います。実際、配信コンテンツは売り上げが今回の件でちょっと上がっているようです。みんな「STAY HOME」でネット配信の利用が増えるから。だからコンテンツを配信できるところはお金が入ります。それができないところはキツいんじゃないですか。

――まだ収束は見えませんが、撮影が再開したら、どのような対策をしますか?

淫語魔:そこは実際に撮影を組んでみないと分からないです。

――やはり、セックス行為がハードルですよね?

淫語魔:普段から消毒はしていますが、もう当人が罹っているか罹っていないかだけです。罹っている人が来たらアウトということです。

――潜伏期間が長いウイルスだから困りますね。

淫語魔:本当です。昔は性病もそうだったんです。

――新型コロナもうつす可能性はなきにしもあらずです。

淫語魔:その可能性はあります。

――言葉は悪いですが撮影現場がギャンブルになってしまいますね。

淫語魔:いま、撮影している人たちはそうかもしれないです。だから、いまは自分を正当化する意味でも、誰とも接触はしない方がいいです。会わなければ罹ることもないので。下手に誰かと会えば、何かあった時に余計な疑いをかけられますから。

 例えば今日のインタビューも実際に会って話したとします。その後どちらかが罹患していたことが分かった場合、お互いの接触者を追いかけることになります。それでややこしいことになるくらいなら、誰とも会わない方がいいです。

――今回はそれを避けるためにLINE電話でインタビューですからね。現状、撮影再開前の対策としては、誰にも会わないのがベストですね。

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