「少ないですけど、お礼です」
彼女は封筒を差し出してきたが、オレは丁重にお断りした。オジサンがヒマツブシをして、女性からカネをもらうわけにはいかない。それでは、せめてお茶だけでもとのことだったので、身体を休めたかったオレは、遠慮なく上がらせてもらった。
出てきたのは、甘ったるいケーキとハーブティー。アラフォーのオレにはまったく不釣り合いだ。相手に尋ねるぐらいはしろよと、文句を言いたくなったが、「おいしいね」と、さも好物のように食べていた。
今日は家族がいないため、ダメ元で犬の散歩を依頼したらしい。
「彼氏に来てもらえば、いいじゃない」
「そんな人、いないです。私の会社、女性が多いし…」
彼女は20代の0Lだが、女性の多い職場だという。出会いは少ないという女が「いい女」である確率は低い。まさにその典型ではないか。家に上がり込んだエロオヤジのオレでさえ、食いつこうという意欲がまったく出ない。かわいいところのない、さえない女だった。
若い女性とこれ以上の世間話なんてできない。おやつも食ったし、そろそろ退散するかと思ったときだ。
リビングの隅に、アニメキャラのフィギュアが置いてあった。誰の趣味かと訊くと、彼女が好きだという。スイッチが入った。ポツリポツリのやり取りだったのが、途切れのない会話に変わっていた。
おいおい、なんか話が合うじゃないか。むしろ、彼女の方が詳しいぞ。もっと話を進めると、彼女はコスプレもやっているとのこと。
「ちょっと衣装を見せてよ」
「じゃ、私の部屋に来て」
おや? こちらはコスプレ衣装を見るだけのつもりで言ったことなのだが、彼女の部屋に入り込むことになったぞ。ま、20代の女の部屋に入るのは、そうそうないことだ。ほんの少しだけ、ヨコシマな考えが、オレの中で芽生えた。
「こっち」と言われ、2階の部屋に入る。
ああ、これは、まごうことなきアニオタの部屋。コスプレ衣装もふんだんにある。それだけに座るところがないのがアニオタ仕様だ。彼女は「ここどうぞ」と、ベッドをトントンと叩いたので、そこに腰掛けた。
「あれを着て、見せてくれる?」
あえて露出度の高い衣装を指さしてみる。
「いいよ」
なんと、彼女は着替えにどこかへ行くわけではなく、この場で上着を脱くではないか。脱ぐと黒のタンクトップを来ていたのだが、ゆったりめだったので、白いブラがチラチラ見えた。
「ごめんなさい、ちょっとココ貸して」
痛めた足をかばうためか、彼女はオレの肩に手をかけ、スカートを下ろす。白のパンティーが目に飛び込んできた。オレは鼻息が荒くなってたと思う。彼女に聞かれていないだろうか。
肩から手が離れたなと思うと、彼女はタンクトップを脱ぎ、さらにはブラまで外してるではないか。エロ経験値高めと自負しているこのオレが、どうしていいかわからない。
背中側しか見えてはいないが、ベッドのある部屋に、パンティー1枚の若い女性とオレがいる。なんだ、なんだ、このシチュエーションは?