父親を亡くし、母親の負担を気にして大学に残るか迷っている。さらに妹が大学受験を控えており、自分の学費だけでも払わないといけない。せっかく○△大学に入ったので辞めたくないとアルバイトを重ねた無理がたたって、体調を崩してしまった。それで仕方なく、出会い系サイトに登録して肉体関係があってもいいのでパトロン探しを始めた。だがそんな深刻な事情なので男はみんな引いてしまい、誰とも話が進まなかったのだという。
会えたとしても、話を聞くなり食事やお茶だけして帰られて音信不通。それで最初にホテルに行く約束をして私を誘ったのに、会うなりカフェに連れてこられたので機嫌を損ねたという。
そんなことを言われてもなあ、という感じだったが、機嫌が直ってしまえば普通の可愛らしい女子大生。しかも○△大学のリケジョだ。
私は逆に困ってしまい、こんな子をホテルに連れ込んでいいのかと考え始めていた。さっきの機嫌の悪さを思うと、どうするのが正解なのかわからなくなっていたのだ。
「この後ホテルに誘おうと思ってたんだけど、本当にいいのかなあ」
「だって、ホテルに行く約束をしたじゃないですか」
「いや、行かないって言ってるんじゃないけど」
「じゃあ何ですか?」
「よし、わかった。行こうか」
そう言って、慌ててナツナを連れ出した。
繁華街を通ってホテルに向かう。ホテルに近づくにつれ、ナツナの足取りが鈍くなった。
「どうしたの?」
「なんか、怖い」
「こういう経験ってあんまりないの?」
「だって、まだ一人しか経験ないから」
まいったなあ、ほとんど処女と変わらないじゃないか。
処女を抱いて最初の男になることを嬉しがる男はいるが、私はある程度経験があってセックスの喜びを知っている女性の方が面倒もなく楽しく過ごせると思っていた。以前処女の子を抱いた時にいろいろと気を遣って面倒だったのを思い出した。
「いやだったら、今日じゃなくていいんだよ」
「行くって言ってるじゃないですか」
とナツナは口を尖らす。やれやれとため息をついて、私はナツナとラブホテルに入った。
ナツナはラブホテルに来るのは初めてのようだった。パネルで部屋を選んだりするのも興味津々で、部屋に入ると広いベッドや浴室を開けて周り、
「ラブホって、こんな風になっているんだ」
と面白がっていた。
私はまだどうしていいのか迷っていたが、とりあえずソファに座らせ、飲み物を渡す。
「前にエッチしたのは彼氏?」
「うん、高校の時に付き合ってた彼氏と。でも卒業したら、彼は地元に残ったので疎遠になっちゃった」
「大学では彼氏は作らないの?」
「うーん、あたしの学部って、メチャクチャ大変なの。彼氏を作ってる暇はないかな。それならアルバイトした方がお金になるし」
「せっかく◯△大学の女子大生なのに」
「逆に◯△大学って知ると引いちゃう男子も多いから。1年の時に他の大学との合コンに行ったことあるけど、大学名は言わなかった。なんか同年代の男の子は話が合わないの」
「まあ、ナツナちゃんからしたら、みんなバカっぽく見えるだろうけど」
「うーん、バカっぽいっていうより、子供っぽくて一緒にいても、楽しくない感じかな」