「こんにちは。22歳の都内の国立の理系学部に通う大学3年生です。容姿はよく褒められるので、悪くないと思います。プロフィールをみて素敵そうな方だなと思いました。片親なのと大学が忙しく生活が厳しいので、支援してくださる関係を望んでいますが、それでも良かったら、返信お待ちしています」
仕事もたまっていたので、それほど乗り気ではなかったが、とりあえずメールを送る。
「こんにちは。メールどうもありがとうございました。支援というのは、一緒にご飯やお茶などのデートをしてお小遣いをもらうパパ活みたいな感じが希望でしょうか? そういうお付き合いはあまり受けていないのですが、初めて会うのは学生さんだと不安で警戒もするでしょうから、時間が取れる時にお茶とかご飯でもしてみますか?」
しばらくして返信が来た。
「すみませんが、いっしょに時間を過ごす方を探しているのではなく、支援してくださる方を探しています。食事だけのために会うなら、バイトに時間を使ったほうがいいので、そういう関係ならいりません。警戒ではなくて、覚悟をもって、支援のある関係を望んでいます。仲良くなれたら食事にも行きたくなると思います。そういうお付き合いを考えてなければ、返事をしていただかなくてけっこうです」
思いがけず強い口調の返事が返ってきて、もう少し軽い出会いを考えていた私は戸惑った。
こうした出会い系サイトなので、そのまま放っておくこともできる。だが、この年末に深刻そうな雰囲気だったので、ちょっと気になってメールしてみた。
「ナツナさん、お返事ありがとうございました。なんだか軽い返事をお返ししてしまってすいません。いろいろ事情があるようですね。それでしたら私の方は大人のお付き合いを前提にお会いしたいと思います。年末で忙しいかと思いますので、年明けでも構いませんので会ってみましょうか」
「そのような関係なら、大丈夫です! ぜひお会いしてみたいです。1回目、まずはホテルからが良いです。年内に会えますか? それで仲良くなれたら食事にもいきたいですが、逆でも大丈夫です。いつが空いていますか? あたしは28日17時よりあとなら時間は空いていますが、どうでしょうか? アルバイトを入れなければいけないので、お早めに返信いただけたら助かります」
28日は忘年会やらも片付き、仕事納めの前日で時間を取れないことはない。だが、どうにも上からグイグイ押してくるやりとりに苦手意識を感じてしまう。自分の娘に叱られている感じがして、どうしたものかなあと思い始めていた。
しばらくそのまま放っておくと、彼女の方から催促のメールが届いた。
「たけしさん、28日はいかがでしょうか? 会えないなら、他の人を探しますので、おっしゃってください。あたしとしては、年内に誰かに会いたいと思っています。プロフィールの感じから、たけしさんと会えればいいなと思ってアプローチしましたが、無理でしたら諦めます」
そこまで言われてしまうと、会わないのが悪いような気分になってきた。けっきょく仕事の残りは最終日に回すとして、28日に上野で会うことになった。
仕事を切り上げて、17時に上野の百貨店の前で待ち合わせ。こんな年末に上野に来るのはアメ横に買い出しに来るくらいなので、出会い系サイトを使って女の子と会うのもどうなのかなあと、あまり乗り気でなかったのも事実だ。
17時ちょうど、寒さに震えている私に女性が声をかけてきた。
「たけしさんですね」
ショートカットのまだあどけなさの残る女性だった。ドラマや映画でアクションシーンをこなしたり、消費者金融のCMにも出ている女優をちょっとタレ目にした感じの可愛らしい感じだった。
もっと愛嬌があればきっとモテるだろうな。初めて会うので緊張しているのだろうか。彼女に笑顔はなく、口元を引き締めて私を睨むように見ていた。
「ナツナさんだね、今日はありがとう」
私がそう声をかけると、ナツナは何も言わずに軽く会釈をした。
どうにも愛想がないので、これはちょっと気持ちをほぐさないとダメかもしれない。
「じゃあ、行こうか」
私たちは近くのカフェに入った。