バシャ!!
どうやら給水タンクがしっかりと蓋されていなかったようで、外した勢いでこちらに水が飛んできてしまった。幸い荷物にはかからず、スーツのパンツが濡れた程度だったのだが…。
「申し訳ございません!!! 大丈夫ですか!!」
女性スタッフが青ざめた表情でタオルを持って来る。
「大丈夫ですよ。替えもありますし」
「いえいえ、これはこちらのミスですので。さっそく新しいお部屋とクリーニング代を用意させていただきます。着替えはお持ちですか?」
「はい、私服もあるので着替えちゃいます」
「わかりました、では一旦失礼します」
そう言って、女性スタッフは部屋を出ていった。
大丈夫とは言ったものの、下着まで濡れてしまている。濡れたものを一旦脱ぎ、替えの下着と服に着替えた。そうこうしていると再びインターホンが鳴った。
ドアを開けると、先程の女性スタッフと管理職らしき男性が立っていた。男性が新しい部屋を用意したこと、部屋代からクリーニング代分値引きすることなどを説明してくれた。
怪我をしたわけではないので「大丈夫ですよ」と伝えたが、「この対応をさせてください」と男性。得しているからいいか、と納得することにした。
一通りの話が終わり、女性スタッフに部屋まで案内される。女性スタッフからは改めて謝罪されたが、
「まぁミスは誰にでもありますよ」
と言うと、彼女は少しほっとしたような表情をした。
新しく案内された部屋はスイートルームだった。どうやらここしか空いていなかったらしい。料金はそのままで、こちらに宿泊できることになった。
部屋に入ると、まず加湿器のチェックをお願いした。今回は問題なく動いた。その流れで、スイートルームの説明をしてもらう。
「以上となります。ご不明な点はございませんか?」
「大丈夫です。丁寧にありがとう」
「いえいえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。ゆっくりとおくつろぎください」
ペコリとお辞儀をする女性スタッフ。そして何やら小さなメモを無言で渡してきて、
「失礼します」
と部屋から出ていった。