「突然すみません…。以前、とてもいいBARがあると伺ってまして」
と中山さん。下の名前は「奈美」というそうだ。
よく見ると、身なりも歩く姿も美しい。モデルさんでもしているのだろうか?
「いえいえ、どのみち飲み歩くのでお気になさらず」
そう答えたあと、好きなお酒やBARに行き始めたきっかけなどを話した。彼女は仕事で行き詰まったり、気分転換したいときにひとりで飲むらしい。そんなこんなで2軒目に到着し、バーテンダーさんに経緯を話す。カウンターの端の席を用意しもらい、奈美さんと並んで座った。
「そういえば、BARにきてウイスキーって飲んだことがないんですよ」
奈美さんがそう言うので、バーテンダーさんにある銘柄の水割りをお願いした。
「うわー、なんかすごいいい香りがしますし、甘みもあって美味しいです!」
なんだか喜んでもらえたようだ。その後もお酒や趣味の話など他愛もない話をし、気が付くと2時間経っていた。
「あっ、ずいぶん時間がたってしまいましたね。そろそろ帰りましょうか?」
奈美さんは少々酔っている様子だったが、そのままチェックをしてお店を出た。
「最寄りの駅まで送っていきますよ」と駅に向かおうとすると、腕を掴まれたような感触があった。横を見ると、実際に奈美さんに腕を組まれていた。
「どうしたんですか?」
「今日、なんかすごく楽しくて。実は今日は近くでホテルをとってるんですよ。もう少しお話しませんか?」
この状況で断る男はいないよなぁ。