「名前は、なつねちゃん、だね」
「はい。そうです!」
「志望動機なんだけど、お金が必要なのかな?」
「それもあるんですけど…実は旦那と1年くらいレスで…」
うつむきながら、少し恥ずかしそうに彼女はポツリポツリと話し始めた。
「お恥ずかしいんですが、私、結構性欲が強くて…。でも、家ではしてくれないし、不倫なんてする度胸もなくて…。それで、風俗で働けば解消されるかもって」
お金が理由で働く女のコは多いが、性欲解消のためにというのは結構珍しい。
彼女の気が変わらないように、すかさずフォローを入れる。
「なるほどね。大丈夫、そういう人って実は結構多いから!」
「えっ、そうなんですか?」
「うん。ウチの店でも結構いるし、心配しなくて大丈夫だよ」
なつねは私の言葉にホッとした表情を見せた。
実際はそんなキャストは数えるほどしかいないが、安心して入店してもらうための言葉だし、まったくウソでもないので許されるだろう。
仕事内容の説明やプロフィールの作成など、緊張が解けたおかげかサクサク進んでいく。
ここで、いよいよ本題を持ちかける。
「それじゃあ最後に、講習についてなんだけど…」
「講習…ですか?」
「初めて風俗で働くコには、必ずウチでは受けてもらってるんだ。講習員は俺になるんだけど、これから時間大丈夫かな?」
講習を受けるつもりがあるのかを確認するのではなく、時間についてだけ聞き、講習が絶対であることを暗に示した。これだけの上玉を逃してなるものか、という気持ちだった。
「あっ、えっと、はい! 大丈夫です」
「よし! それじゃあ、ホテルに行こうか」
勢いで乗り切ることができたようだ。
心の中でガッツポーズしながら、ホテルに向かった。
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