そんな気性が荒い彼女が、送りを待たされて黙っているはずもない。
「ちょっと! なんで私が待たされなきゃいけないわけ!?」
「す、すみません、ユウカさん。いま、ドライバーが全員出てて…まだ戻ってこれないんです」
「はぁ!? 知らないわよそんなの! ほんとに、この店のスタッフはクズばっかり!!」
「15分もすれば戻ってくると思うので…」
「ふざけんな!」
バーンと中身の入ったペットボトルを投げつけられ、どうすることもできない。
なぜこんなことで自分がいいように言われなければならないのか、フツフツと怒りが溜まったことを覚えている。
さらに彼女は、常に自分を一番に考え、送りに関して特別扱いすることを私たちに強要した。
「ほかの女と相乗りなんて絶対嫌だからね。私ひとりにして」
「あのドライバーはキモいから無理。ほかのドライバーをさっさと用意してよ!」
「送りが遅れるんならタクシー代出せよ!!」
日に日にエスカレートする要求に耐えられなくなり、店長に相談することにした。
何が面倒って、ユウカが太客を何名か本指名として抱えていたこと。クビにしてそのまま客を持っていかれるのが店としては痛手だった。
しかし、結局、ユウカはこうした傍若無人ぷりを発揮した1カ月後あたりでクビになる。
理由は単純で、ユウカに付いていた太客が離れて別の嬢を指名し始めたからだ。
彼女のわがままぶりは、なんと接客にまで現れていたらしく、適当な接客に呆れた顧客たちが彼女を見限ったのだ。
「はぁ!? いいわよ、辞めればいいんでしょ!」
クビを言い渡されたユウカは、足早に店長室から出ていった。その後ろ姿はなんとも小さく、かつて放っていた威圧感のカケラもなかった。