「いや、難しくはないよ。うちの店も未経験で働いてるコはたくさんいるし」
「そうなんだ。じゃあ…私は大丈夫なの?」
「お店的には問題ないんだけど、未経験者って講習を受けてもらう決まりがあるんだ」
「講習…ってお仕事の?」
「そうそう。それで相手が俺になるんだけど…。それさえOKならウチで雇えるね」
「うん、わかった。大丈夫だよ」
特に考えることもなく、即決で決める美月。
ユウスケが聞いたら、どう思うんだろう…。
「それじゃ、このあとホテルに向かうから、その記入シートが書き終わったら教えてくれる?」
「うん、わかった! でも、バレたのが小鉄くんで良かったよ」
「えっ、どうして?」
「だって信用できるし…」
「あはは。そう言ってもらえると嬉しいよ」
すでに「講習が必須」という嘘をつかれてるんだけどね。
そうこうしているうちに、美月は新人用の記入シートを書き終えた。
「それじゃ、行こうか」
少し緊張気味の彼女に声をかけ、一緒に事務所を出た。
※※※
「ラブホテルかぁ。なんか、すごく久しぶり」
「ユウスケとは行かないの?」
「うーん、ないかなぁ。付き合ってた時もお互いの家とかでしてたし…」
「えっ? ユウスケって、結婚前は実家だったよね?」
「そうそう! めちゃめちゃドキドキしたんだよね(笑)」
風俗の仕事をしていて、地元トークで盛り上がることがあるなんて思わなかった。
気まずい雰囲気を出されるよりはいいけど、ちょっと不思議な気分だ。
いつものようにフロントに声をかけ、入室した。