【事件簿】夫も娘も売り飛ばした悪女

※イメージ画像:Getty Imagesより


 大手新聞の特集や連載の中にも、しばしば目を引く企画が少なくない。

 「読売新聞」が昭和36年(1961)6月25日から『女の風雪』という連載を開始した。さまざまな境遇に生きてきた女性の半生を紹介する内容であるが、その第1回に、乱れた生活の挙句に、夫や子供たちを金銭と引き換えにして生きてきた女性のケースが取り上げられている。

 東北地方の山村に住むキワという女性は、若い頃にはすでに村の複数の男たちと関係を持つほどになっていた。そのうち、妊娠したキワは、炭焼きの仕事をしている勇という若者に「子供が生まれそうだ」と駆け込んだ。記事には書かれていないが、おそらく父親が誰だかわからない状態で、温厚な性格の勇に目をつけたのだろう。

 これに対して勇の実家は「かなわない」と困り、村はずれに小屋を設けて2人を住まわせることにした。丸太で作られた、中には土間と穴を掘った囲炉裏があるだけの小屋である。

 夫婦になったとはいえ、勇は生活費を稼ぐために山にこもって炭焼きの仕事をするようになった。すると、小屋には村の男たちが入れ替わり立ち代わり寄るようになった。野菜や缶詰を手土産に、キワの身体を楽しむというわけである。人のいい勇は小屋に立ち寄る男たちに、「いつも世話になって」と礼を言った。

 やがて勇は、正月明けから夏場までは漁場の仕事をして、お盆に一度帰ってくると、今度は年末まで山で炭焼きの仕事をするようになった。勇が家にいるのは、本当に盆と正月だけとなった。だが、そこまでして働く勇の稼ぎにキワは不満だった。そこで自ら待遇のよい仕事を探してきて、前貸金を取って勇を働かせた。亭主を身売りしたのである。

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