面接から2カ月、彼女はランキング入りするほど人気になっていた。
プロデュースの賜物と言いたいところだが、実際は彼女の実力によるところが大きかった。
「興味本位でやってみたい」と言っていただけあって、仕事に取り組む姿勢からして違った。
お客様の名前や特徴、連絡先などを書いた顧客帳を作ったり、仕事専用の携帯を契約してこまめに営業メールを送ったり。接客で分からないことがあれば、私やランキング上位のキャストを質問攻めだ。
「セイラちゃん! ランキング入り、おめでとう!!」
「ありがとうございます。これも店長のご指導のお陰です」
セイラは深々と頭を下げ、思いがけない言葉を口にした。
「あの…。お礼として食事でもご一緒したいのですが、今晩空いてますか?」
「えっ? あ、うん、大丈夫だよ」
まさか、キャストの方から誘われるとは思わなかった。
どちらにせよ、お祝いにこちらから誘おうと思っていたので、断る理由もない。
待ち合わせの場所と時間を確認し、私は仕事に戻った。
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「す、すげぇ…」
その晩、連れてこられたのは、高級ホテルに入っているレストランだった。
テーブルマナーもよく知らない私は、完全に場の雰囲気に飲まれてしまう。
「遠慮しないでお酒もどんどん頼んで下さいね」
「いや、あの、大丈夫です」
思わず敬語が出てしまった(笑)。緊張するにもほどがある。逆に、セイラは実に堂々としていた。彼女のそんな姿に見とれていると、いきなり衝撃発言が飛び出した。
「あの…。この後、お部屋とってありますので…」
「うぇっ!?」
「私がどのくらい成長したか、店長にちゃんと見てほしいんです」
突然すぎる誘いに驚きは隠せなかったが、据え膳食わぬは男の恥。
不安そうにこちらを見つめる彼女に、私は笑顔を向けてうなずいた。
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