【ホテルのレストランにて】
お祝いの食事は、高級ホテルの中にある高めのレストランになった。
「こ、こんな良いお店でご馳走になっていいんですか!?」
「全国3位って、すごいことなんだよ? これくらいはしなくちゃ」
と言っても、超高級とまではいかない程度のお店だった。
エレアの稼ぎを考えれば、大したレストランではないことは明白なのだが…。
「こういうお店よく来るんじゃないの?」
「いやいやいや! 私、初めてですよこんなお店!」
「あんなに稼いでるのに?」
「いやぁ、ほぼ貯金してますもん」
確かに、彼女が高いブランド物を買い漁ったり、遊びで散財しているなんて聞いたことがない。男に貢いでいるのかとも思っていたが、まさか貯金していたとは…。
「とりあえず1億貯めたいなーっと思いまして」
「なかなか先が長いね。まぁ、エレアなら数年で達成できるだろうけど」
「やだなー。褒め過ぎですよ店長」
「ははは、本心だよ。…それじゃあ、3位入賞おめでとう、乾杯」
ふたつのワイングラスがカチンと音を立てる。
綺麗な深紅色のワインを、彼女はグイッと飲み干した。
次々に運ばれてくる料理はどれも美味しく、それに応じて私もエレアも酒が進んだ。
食事が終わる頃には、お互いほろ酔い気分だった。
「てーんちょ。ご馳走様でしたー!」
「うん、喜んでもらえたみたいで良かった」
「はーい! これからどうするんですか?」
「どうって…帰るんでしょ?」
エレアは私をじっと見つめた後、にっこり微笑んで、
「せっかくだし、ここのホテルの部屋でもうちょっとお話しましょーよ」
と、私の耳元で囁いた。