「ナツちゃん。面接の時はあまり話が聞けなかったから、ちょっと先に面談しようか」
「えっ、あ、はい…」
モジモジと手遊びをしたまま俯いてしまうナツ。
やはり、彼女は風俗店で行われる行為にそこまで前向きではないのだろうか。
「お姉さんとは違って、あんまりこういうお仕事の行為は好きじゃないのかな?」
「ち、ちがうんです。そのぉ…」
彼女は一呼吸置いて、口を開く。
「お姉ちゃんには言ってないんですけど、私…別のお店で働いてるんです」
えーーーーーーーーーΣ(´∀`;)!!
衝撃的過ぎる発言に、思わず目が飛び出そうになる。
いや、だってさっきまで“私、未経験です”みたいな雰囲気出してましたやん。
「そ、それはびっくりだね(笑)。なんでお姉さんには内緒なの?」
「お姉ちゃんって、昔から私にべったりなんです。別に嫌いなわけじゃないですけど、お仕事くらい離れててもいいかなって…」
つまり、ナツが面接で自分の意見をあまり主張しなかったのも、それは本人の性格によるものではなく、姉の顔を立てるためにしていたことなのだ。
姉の前では自己主張のできない妹を演じることがナツの中で定着していて、それをアキも演技だとは疑わない。
アキがいつまでたってもナツのことを気にかけて仕事まで共にしようとするのは、そうした姉妹間のすれ違いが原因だと気付かないのだろうか。
「ちなみに、お店ってどんなところで働いてるの?」
「あっ、えっと、ピンサロです」
「じゃあ、こういうホテルヘルスで働くのは初めてなんだね?」
「そうですね。だから、どちらにせよ講習は受けようと思ってました」
まぁ驚くことはあったが、やることは変わらない。
とにかく一から教えていくか…。
私は目の前に会ったコーヒーを飲み干して、まずは口頭で入室からの振る舞いについて説明することにした。