セックスに関する論理的な根拠のないうわさ、迷信やデマ、都市伝説といったものは、昔から現在に至るまで非常に多い。
筆者が若い頃に周囲がよく話題にしていたものとして、「男がメンソールのタバコを吸い続けているとEDになる」というのがあった。もちろん、まったくのでたらめだったが、最近でもそんなことを信じている人がいるのだろうか。
さて、日本各地には「初物を食べると風邪を引きにくくなる」といった、縁起物についてのジンクスが伝えられている。おそらくこれに起因するものとして、「処女とセックスするとよいことがある」という俗説が生じたようである。
そして、迷信というのは勝手なもので、自らに都合のいい「ご利益」をこじつけるものである。江戸時代末期には、「処女とのセックスは難病治癒に効果あり」というまでに変形し歪んだものとなったようだ。
明治8年5月、千葉県で40歳の男が死亡して埋葬された17歳女性の遺体を墓から掘り出し、性的交渉を試みたことが発覚し逮捕された。「女性の死体を犯せばEDが治る」との迷信家を信じたのが動機だった。明治17年10月にも、同じ迷信を実行しようとして、東京・小石川で若い男性が墓を掘り返しているところを発見され、取り押さえられている。
同種の、処女の難病治癒力迷信は、田中香涯の『愛と残酷』などにも紹介されている。研究者たちは、いうまでもなく「科学的根拠のない迷信」であると断じている。