【緊張と警戒心を解いてもらうため、懇切丁寧に面接】
カナコは今まで男性経験も少なく、風俗の経験もない、いわゆる完全業界未経験というやつだった。
年齢もついこの間20歳になったばかりで、人生経験は浅く、敬語とタメ口が入り混じる拙い喋り方が特徴的。
ミディアムな長さにゆるふわパーマ、クリッとした瞳、白を貴重にしたファッション…。まさに今時の女の子とも言える清楚な雰囲気からは、ホストクラブに通い詰めて借金を背負っているなんて、とても思えなかった。
ホストクラブには友達に誘われて行ったのがきっかけで、その魅力にハマッてしまったらしく、今もホストと付き合っているとのこと。
お金が使えなくなると彼氏が離れてしまうかもしれない、という恐怖心があるらしい。
傍から見れば、それは恋人としてではなく「金」として見られていると思うのだが、本人はそんなことを気にも留めていない様だった。
そんなカナコだが、風俗で働くのにはどうしても抵抗があったらしい。
本人は今まで一般的なバイトしか経験がなく、キャバクラやガールズバーなど比較的ソフトなナイトワークの経験はなかった。
お金のためとはいえ他人に女を売るのは、「彼氏に悪いから」諦めていたそうだ。
しかし、借金でついに首が回らなくなった彼女は、最終的に彼氏に相談する。その時のメッセージを見せてもらうと、
「カナコが俺と一緒に頑張ろうとしてくれるのすごく嬉しいよ。本当はして欲しくないし苦しいけど、きっとカナコと俺なら今の辛さを乗り越えていけると思う。だから働くのは止めないよ」
という、なんともテンプレートの様な答えが書いてあった。
だがカナコは、
「こんな感じで、めちゃめちゃ信頼し合ってるんです私たち…。だから、彼氏のためにも風俗で頑張ろうと思います!」
と、息巻いた。私は、
「そうだね。一生懸命頑張って、まずは借金を返していこう!」
と、彼女の湧き出るやる気を削がない様に、言葉を選びながら面接を進めた。さらに、
「風俗は簡単な仕事ではないし、楽な仕事でもない。でもカナコちゃんみたいに頑張ろうとする意志のある子は、絶対にお金稼げる世界だから」
「なんだか俺も店長として応援したくなっちゃって…。分からないことがあれば何でも聞いてね」
なんて風に、警戒心を解くために優しい雰囲気で語り続けた。
面接終了後、完全未経験であるカナコに、ついに実技講習の旨を伝える。
そして、実技講習を行うために、ふたりでホテルへと向かったのであった。