【距離が一気に縮まった出来事】
そんなある日、仕事中に待機場にいる彼女が突然泣き出してしまった。
店長に「何があったのか聞いてこい」と促され、彼女を事務所から離れた面接室に連れていく。
面接室のソファーに腰掛けながら「彼氏が浮気してたんです…」と、サクラコは涙ながらに語った。
そもそも自分の彼女を風俗店で働かせている時点でろくな男ではないのだが、彼女にとってはそれでも大切な存在だったらしい。
「学生時代いっぱい勉強して、銀行に就職して、順調だったはずなのに」
「あんな彼氏のために、なんで今こんなことしてるんだろう…って」
ぽろぽろと大粒の涙を流すサクラコの横に座って肩に手を回すが、拒まれない。それどころか彼女の方から私に寄りかかって来る。
今考えてみれば卑劣極まりないのだが、この時私は「弱っている! チャンスだ!!」と思った。
【押しの弱い彼女をそのまま押し倒した】
顔を近づけて、唇が触れるか触れないかのところで一度止まる。強く拒否されないか確認するためだ。
彼女は少し戸惑った様な表情をするが、拒まないことを確認して唇を重ねる。そして私は、そのままソファーへと押し倒した。
軽くこちらを押しのける動作をするが、本当に押し返すほどの力が入っていない手は、嫌がっていないことの裏返しだと悟る。
唇を離さず、舌を絡めながら時折彼女の目を見つめると、トロンとした瞳でこちらを見つめ返してくる。
“これならもう抱いても大丈夫そうだな”と頭の中で確信した時、
「こんなところじゃダメです…」
と彼女が口を開いた。
「ごめん、つい…」と悪びれる素振りを見せるが、心の中はもうガッツポーズ。
いち早く彼女をホテルに誘う方法を考えることで頭がいっぱいだった私は、
「とりあえず今日はもう帰りな。仕事終わったら連絡するから」
と、諭す様な口調でサクラコを帰らせる様に説得した。
驚くほど素直に「はい、わかりました…」と首を縦に振って、彼女はその提案を受け入れた。
面接室から出た私は店長に「プライベートでの問題みたいで、今日はもう帰るとのことです」と、伝える。
その後、エレベーターに乗って手を振るサクラコを見送り、彼女との夜の営みを妄想しながら仕事に戻った。