この手の店に出入りするネーチャンに「どうしてこういう店に来たの?」と訊ねれば、皆さん揃って「友達の紹介で」と答える。ゆえにどういうルートで出会い喫茶に集うようになったのか調べを進められなかったが、売春の温床に女を集めるもっとも手っ取り早い方法は、当時ならスカウトを利用することだった。
まぁ、半数はほぼプロと言っていい。そのためネーチャンたちは素性をOLだの女子大生だのとほざくのが通例なのだけど、ヨウコは非常にアタマが弱いのか「〇〇(当時そこそこ売れていたグラビアアイドル)と同じ事務所に所属していたのぉ」と高らかに素性を宣言。後日、事実確認のためそのプロダクションの宣材写真を片っ端から見比べたところ、確かに在籍していた。初見の買春しようという男相手に個人情報を垂れ流す了見が理解できない。こういうオツムだから逡巡なしに売春に明け暮れるのかと考えるしかない。
さて、問題は値段である。弊社支払い限度額は、目線入りのハメ撮りで3万円、目線なしなら5万円である。宣材を見てようやく誰か分かる程度の元芸能人とはいえ、この値段で交渉したところで決裂は火を見るより明らかだ。幸い、取材費が豊潤な某編集部から「怪しいエロ現場を取材してほしい」との依頼を受けていたので、会社の他所へネタを売り飛ばす算段がつき、言い値でハメ撮りの許可を得た。お値段は20万円也。当時も出版不況と呼ばれていたが、馬鹿馬鹿しい企画にポンとこんな金を放れる程度には余裕があったのだと書いていて悲しくなってきた。
閑話休題。ヨウコはそこそこ大きな芸能事務所に所属していたものの、グラビアアイドルとして芽が出る気配はまるでなく、目標の歌手になれそうにないと24歳で事務所を退所。しかし、芸能人という肩書で得られた贅沢はやめられず、愛人業の傍ら素人売春に励んでいた。
ヨウコは上記のようなどうしようもない人生にあれこれと言い訳と粉飾した与太を飛ばしていたが、その辺りは聞いたそばから忘れるほど下らない内容だったので割愛する。真偽不明の芸能ゴシップはなかなか面白かったが、裏が取れていない内容を書いても仕方がない。
四捨五入して30になろうという女が20歳そこそこのノリで話すのだから結構な苦痛だ。もとより彼女の人格はお察しの通りなのだから、さっさとハメ撮りの作業に入った。この手の体だけいい女は概してマグロでつまらないセックスをするものだが、ヨウコは18歳で芸能界デビューを果たしてから男性芸能人の公衆便所として馬車馬のように働いてきただけあって、かなりのテクニックだった。フェラひとつとっても舌がツボを的確に刺激する。また、興奮を高める術もよくご存じのようで、喘ぎ声から目線の動かし方までよく心得ていた。
素晴らしい技術に感嘆する一方、「これで喋りがよければ芸能人として成功したのかも知れないのに…」と切ない気分になった。もっともこういう手合いは、小金持ちの人間と六本木や麻布のクラブで遊べば10分に1回の割合で見つけられるのだけど。