昭和12年(1937)1月16日の午前3時頃のこと。静岡県の熱海温泉梅園で、男が女性を全裸にして暴行を加えているのを、たまたまクルマで通りかかった運転手が発見、警察に通報した。男は駆けつけた熱海署員によって拘束された。
やがて、男は東京深川で工場を営む上野(32)という者で、女性はその妻(27)と判明した。
警察の調べによれば、上野は自らが経営する工場で働く21歳の男性従業員を妻が可愛がっていることに嫉妬し、去る15日に熱海に帰省した際、出迎えた妻を夜半にクルマで梅園まで連れて行き、全裸にしたうえで樹に縛りつけてリンチを加えたというのである。
この際、上野が妻にどのような「リンチ」を行ったのかは、記事では説明されていない。ただ、目撃した運転手が「恐ろしくなって」通報したというから、かなり激しい暴行であった可能性もあろう。
また、21歳男性従業員と妻との関係だが、単に若い従業員として目にかけていた程度なのか、男女の関係になっていたのか、これも詳しいことはわからない。だが、たとえどのような状況だったにせよ、奥さんを深夜に全裸にして屋外で暴行を加えるというのは、尋常ではない、逸脱した行為であることに違いはなかろう。