昭和6年(1931)11月9日の夜。大阪・島之内署は、かねてから捜査を進めていた「移動エロ鑑賞団」を旅館で検挙した。逮捕者は、主催者である宮地良一(31)と岩間愛子(24)ほか、40名に及んだ。
この移動エロ鑑賞団なるものだが、要するに、会費を取ってヌードショーのようなものを行うアングラな業種である。当時は、まだAVはおろか、いわゆるブルーフィルムの類もない時代である。この頃の新聞を見ると、民家を借りて開催していたヌード鑑賞会が検挙されたといった事件が散見する。
内容としては、女性が全裸またはそれに近い状態になって観客が鑑賞するものや、複数の出演者による性行為、いわゆるカラミを演じるものもある。このカラミを見せる内容はいろいろあるが、男女によるものをシロクロ(白黒)ショー、女性同士のものがシロシロ(白々)ショーなどと呼ばれていた。
おそらくこの鑑賞団、場所を決めずにゲリラ的に営業することによって、少しでも検挙摘発を逃れようとしたのではないかと考えられる。
警察が調べを進めたところ、この鑑賞団の会員の中には、現役の大阪市議会議員や市の職員、大手有名企業の重役、宗教団体関係者などが在籍していたことがわかった。