■検察は犯人の味方…失意の中で起きた不思議な現象
作品を描くにあたっては、相当な勇気と決意が必要だったであろうことは想像に難くない。それでもペンを突き動かされた理由のひとつには、犯人に下された「不起訴」という処分への憤りがあったのだろう。
「検事は最初から『相手は精神病患者だから仕方ないですね』って感じで、完全に犯人の味方でしたよ。犯人として扱うというよりも『可哀想な患者さん』という感じで…。刑事さんの方は『僕だったら死刑にしますよ!』とまで言ってくれましたけど、起訴するかどうかを決めるのは検察ですからね。たまたま村崎の事件を担当した検事がそうだっただけかもしれませんけど、簡単に納得できるものではなく、漫画でも『犯人が精神病患者で通院歴があったら殺人やってもいいのかよ!』って描いちゃいましたけど…。病気だからといっても、今は精神科に通ってる人なんていっぱいいるわけですから」(森園みるく/以下同)
とある関係者筋に独自取材したところ、村崎を刺殺した男性は今年中にも退院して社会復帰する可能性があるという。
昨年5月に芸能活動をしていた大学生の冨田真由さんが東京・小金井市でファンの男に刺され、重傷を負わされた事件が世を騒がせたが、東京地裁で犯人に下された判決は懲役14年6月だった。殺人未遂としてはかなり重い判決だったが、被害者の冨田さんはもちろんのこと世間でも「軽すぎる」という声が多数上がっている。
村崎の事件は身勝手な理由で殺害にまで至った凶悪事件にもかかわらず、たった7年ほどで加害者が社会復帰するかもしれない。そうなれば妻である森園の失望と恐怖は計り知れないものとなるだろう。
それでも作品を描いたのは単に憤りだけでなく、ある「不思議な出来事」が後押しとなったのだという。
「昨年の村崎の7回忌の時、村崎が生前に使っていたノートパソコンを保管してもらっている編集者さんから『パソコンに変な模様が浮かび上がっているんです!』と画像が送られてきたんです。村崎はメディアに出るときは頭巾をかぶって片目だけを出していたんですけど、そのノートパソコンを1年ぶりくらいに開いたら村崎の目のような模様が画面に焼き付いている、と。古いパソコンなのでトラックボールがあって、それが画面に当たって模様になったとは思うんですけど、その編集者さんによると『こんな色にはならない』ということらしくて。コンピュータ系の書籍を数多く手がけている編集者さんなのでパソコンに詳しく、そんな人から『これはおかしい』と言われたのが気にかかり、ちょうど7回忌に模様が浮かんでくるのも不思議に思いました。その翌日くらいに、事件を漫画化するという企画のお話をいただいたんです。ですから、これは村崎が『描け』と言っているのかなと…。その不思議な現象がなければ、この漫画を描いていなかったかもしれません」