警察官の不正行為や犯罪など、別に珍しいことではない。明治期から現在に至るまで、軽微な犯行から重大な凶悪事件まで、警官がその当事者になった事例は数多く報じられている。しかし、それらは全体のごくわずかに過ぎないとも言われている。
大正13年(1924)9月21日のこと、福島県警は警視庁の元巡査である安藤秀(26)を逮捕監禁剤の容疑で逮捕した。
福島県警はかねてから県内の料理店などに若い女性が不正に身売りさせられているとの情報を得て、捜査を進めていた。その結果、警視庁の浅草区七軒町署に勤務していた安藤がかかわっていることを突き止めた。そしてこの日、安藤の下宿先に急行し、その場で逮捕した。
この安藤、現役の警察官時代に、繰り返し女性をだまして売り飛ばしていたことが判明した。しかも、その犯行は勤務中に実行されていたというのである。
その手口は、実に簡単である。安藤は交番に道を尋ねるなどの用件で訪れた女性を、そのまま斡旋業者に引き渡す。その女性は、わけもわからずに遠方へと売り飛ばされてしまうというわけである。